番外編 クリ★プレ 前話 ■しおりを挿む
「あっ、裕斗……ごめんね?」
「うん……。それより『俺をデ』ってなんだ?」
「き、気にしないで! ねぇ葵!」
「あ、あぁ。明日、裕斗とケーキのデコレーションをするからな、な?」
「そうそう! 裕斗、と! デコレーションだよっ?」
「そうか」
なんだ……俺を、じゃなくて、俺と、なのか。
というか、デコレーションの“デ”なら、俺をっていうのは明らかにおかしいよな。
「俺、生クリーム塗るの初めてだ。うまく塗れるかな?」
「大丈夫だよ! 裕斗は安心して、僕にすべてを任せて?」
「オレにも任せろ。最高に可愛く飾ってやるからな」
明日はクリスマスイブ。
長谷川と藤枝の部屋で、三人でクリスマスケーキを作って食べるんだ。
スポンジケーキに生クリームを塗ってイチゴを飾るだけだけれど、すごく楽しみ……。
でも可愛いケーキになったら、食べるのがもったいなくなりそうだな。
「つか、もうすぐバスの時間だぞ。さっきの続きは、帰ってからだな」
「うん! 帰ったらいっぱいちゅっちゅしようね!」
「あ……!」
せっかく忘れていたのに、また顔が熱くなってきた。
とは言え、三人しかいない部屋でなら、何をされても……いいか。
俺は定位置である二人の真ん中に着いて、バス停に向かって歩き出した。
この時の俺は、可愛く生クリームで飾られるのが自分だなんて当然知らない。
-END-
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