番外編 クリ★プレ 前話

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「裕斗……僕も愛してるからね?」


 俺が押さえている方とは反対の耳に、長谷川が息を吹き掛けながら囁いてきた。

 しかも、いつもの高くて元気な声とは違って、真剣な時に出る低めの声だ。

 ドキドキしながら振り返ると、これまた近すぎる位置に最上級の美少年の顔があった。

 俺の肩に顎が乗っているから、さっきの藤枝より更に近くだ。

 それにうっすらと浮かんだ微笑みが、藤枝の欲情した目に負けず劣らず色っぽい。

 ここが二人の部屋ならまだいいんだけれど、残念ながら駅前の歩道橋だ。

 俺は長谷川から離れるために身を捩った。


「は、はせ……」

「こーら。三人でいる時は悠貴、でしょ?」

「!?」


 ちゅっと頬にキスをされて、俺は思わず持っていた袋を手放してしまった。


 さっきスーパーで買ってきたケーキの材料……市販のスポンジケーキとイチゴ、そして何故か生クリームが二パック入った袋だ。


「っと、危ねぇ」


 ギリギリでそれをキャッチしてくれた藤枝は、スポンジケーキやイチゴではなく、何故か生クリームの無事だけを確認した。

 そして、今度は落とさないようにと手首に引っ掛けてくれる。

 ざっと見たところ、スポンジケーキもイチゴも無事だ……よかった。


「ありがと……」

「気を付けろよ? 明日、これで裕斗をデ」

「葵ッ!」

「!」


 藤枝の台詞を遮って、長谷川が俺の耳元で叫んだ。

 間近でその音波を食らった鼓膜が、キーンと悲鳴を上げる。




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