番外編 クリ★プレ 前話 ■しおりを挿む
長谷川と藤枝、そして俺の三人で行ってきた買い物の帰り、駅のバスターミナルへ向かう歩道橋の上。
そこから見下ろせる駅前の拓けたスペースに、大きなクリスマスツリーが飾られている。
行きの時はそうでもなかったんだけれど、午後六時を過ぎた今はライトアップされていて、すごく綺麗だ。
それを見た長谷川がはしゃぐものだから、バスが来るまでの時間、三人で歩道橋の上からツリーを見ていこうということになった。
俺の立ち位置はもちろん、二人の恋人の間。
二人がやけに密着してくるのは寒さのせいだろうか、なんて思いながら、俺は幻想的なツリーを見つめていた。
「なぁ、裕斗」
「ん?」
藤枝からの呼び掛けに、俺はツリーから視線を動かさずに返事をした。
あまりにも綺麗で、目を離したくなかったんだ。
けれど。
「……愛してる」
「はっ!?」
まるで『寒くないか?』とでも言うような調子で愛を囁かれて、俺は耳を押さえながら顔を藤枝に向けた。
密着されていたせいか、めちゃくちゃ顔が近い。
そのせいで、みるみるうちに耳まで熱くなっていく。
「そんな可愛い顔するなよ。キスしたくなるじゃねぇか」
どうせ“ただの赤面した俺”だろ、なんて言い訳は、もう通用しない。
目の前の超絶イケメン・藤枝は、“ただの赤面した俺”を本気で可愛いと感じて、更に欲情までするんだから。
藤枝の欲情した目に見つめられて身の危険を感じた俺は、反射的に後退りしようと足を動かした。
けれど、俺の背中に密着している長谷川がそれを許さない。
←Series Top
|