番外編 クリ★プレ ■しおりを挿む
「葵、お待たせ」
長谷川に話し掛けられて、藤枝の唇がそっと離れていく。
それを寂しく思いながら、俺は閉じていた目を開いた。
「!」
「準備万端だな。こっちもだいぶいい感じだぞ」
「ほんとだっ! 可愛い……葵のキスで、いっぱい感じちゃった?」
「う……」
恥ずかしい。
じゃなくて、なんだよこれ!
俺が目を瞑って藤枝にキスされている間に、ベッドの上が少し変わっていたんだ。
まずケーキがなくなっていて、元々敷いていたビニールシートの上に、更にバスタオルが敷かれている。
そして、その傍らには冷蔵庫にあるはずの生クリーム入りボウルと、膨らんだ絞り袋が二つ。
もともとボウルに入っていた生クリームが半分以下になっているから、二つの絞り袋の中身は生クリームだろう。
というかケーキが完成した時、絞り袋はほとんど空になっていた。
それって、長谷川がわざわざ補充したってことだよな?
……藤枝の台詞とあの状況、そして“今からやる”クリームプレイ。
果てしなく嫌な予感がする。
俺は、バクバクと激しくなっていく鼓動を感じながら、確かめるために口を開いた。
あぁ……口の中がカラカラだ。
「も、もしかして、キスの続きはクリームプレイってやつ……?」
「そうだよっ! だから、先に服を全部脱ごうね?」
やっぱり!
「心配するな。最高に気持ちよくしてやる」
そういう問題じゃないだろ!?
とは言え、二人掛かりで来られて逃げられるわけもなく……。
俺は裸に剥かれながら、このために生クリームを二パックも買ったのか、なんて、今更なことを考えていた。
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