理想的なカップルの裏事情

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「キミの名前は?」


 ニコニコ。

 男にときめく奴なら鼻血を出すかもしれないぐらいに可愛い笑顔で、手マイクを俺の口元に突き付けてくる。


「高橋、裕斗」

「へー、いい名前だねっ」


 キラキラ。

 一層眩しくなった笑顔に、俺は耐えられなくなって思わず目を逸らした。


「裕斗」


 斜め上から降り注ぐ華やかなオーラが俺を呼んだ。

 普通、いきなり下の名前で呼ぶ?

 ちょっと馴れ馴れしくない?

 …なんて、言えるわけがないじゃないか。

 こないだほどじゃないけど、口の中から喉までが若干渇いている。

 それに饒舌になにかを言えるのなら、インタビューを申し込みたい。


「裕斗は何組だ?」

「5組…」

「あれー5組も探したのに。ね? 葵」


 探したってなにを?


「見た目が平凡すぎて目に付かなかったな」

「んー、そうかも」


 もしかして俺のこと?

 平凡はいいとして、なんでこいつらが俺を探すんだ。

 というか、俺は大抵お前らの取り巻きの外側にいたぞ!


「まぁいいや!とにかく、これからよろしくね、裕斗!」

「特別に仲良くしてやるから、ありがたく思えよ」

「……は」


 なにを言ってるのかわからない。

 長谷川はまだいいけど、藤枝はどうして上から目線なわけ?

 俺にだって、プライドとかいろいろあるんだからな…!


「あーくーしゅっ」


 長谷川が両手で俺の左手を握った。

 と同時に、背後から野太い悲鳴が起こる。


「しょうがねぇな。ほら」


 次に藤枝が俺の右手を握ったら、今度は少し高い声の悲鳴が起こった。




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