週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
ぼーぜん─彰
それは、暑い暑い夏の日の夜だった。
「彰」
「なーに、朝陽さん」
「あちーな」
「夏だからね」
「アイス食いてーな」
「さっき食べてたじゃん」
「もーなくなった」
「またお腹冷えるよ」
「オレはあちーんだ」
「一日一個の約束でしょ?」
「彰のくせに生意気だぞ」
「今日は我慢して」
「…ふんっ」
あ、拗ねちゃった。
朝陽さん、かわいー。
そろそろ朝陽さんのために、凍らせといた濡れタオルでも出してあげようかな。
そう思って俺に凭れる朝陽さんを見たら、パッと離れられた。
「あ、き、ら」
「なーに…?」
「今日からオレたち…」
「うん」
「別々に寝よ」
「え」
自分の顔には密かに自信あるんだけど…今、すげー不細工な顔になってると思う。
だってあれじゃん!
家庭内別居ってやつじゃん!
やだやだ!
俺、朝陽さんがいないと眠れない!
「あとさ、セックスもしばらく…したくねーから」
「……………」
「だからオレにくっつくなよ」
「……………」
「オレからもくっつかねーしな」
「……………」
「じゃ、彰は今日からソファで寝ろ」
「え、ソファって」
ショックのあまり呆然としてたけど、ソファの単語で我に返った。
だって俺の方がでかいのに。
脚が思いっきりはみ出るんですけど。
いや、そんなことより急になんで!?
アイスの約束持ち出したから?
あれは朝陽さんを思って…!
だってさ、あの時の朝陽さんすげぇ苦しそうだったし!
「はい、彰の枕」
「ありがと…」
「ん、どーいたしまして」
「朝陽さん、本気?」
「なにがだ」
「家庭内別居…」
「なんだそれ?」
「別々に寝るとか、セックスしないとか」
「それがどうした」
「俺…そんなことになったら眠れなくなる」
「なんだと?」
「朝陽さんを抱いてないと安眠できない!」
「バカ野郎!それじゃオレが寝てらんねーんだよ!」
朝陽さんは、さっき俺に渡した俺の枕をソファから取った。
もちろん俺を殴るために。
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