週刊『彰と朝陽』

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どうしようもない─朝陽



 背筋に寒気が走る。

 身体の内側が寒さに震えて、熱を欲した。

 世間はこんなに暑いのに、だ。

 オレは堪らず、傍にいた彰を見上げた。

 ある事情で助けを求められないから、彰が読んでる雑誌を黙って取り上げる。


「あ、なにすんの」

「彰がオレを無視するのが悪い」

「してないし!」

「なんだと? お前はオレとこの女のどっちが大事なんだ」

「え…」


 ちょうど彰が読んでたページにいた水着の女を適当に指差す。

 なかなか男ウケのする見た目の女だ。

 彰がオレと出逢った日に連れてた女に似てる。

 てか、なんだこの記事は…“美味しい海の家”特集?


「そんなの、朝陽さんに決まってる!」

「あ…そか」

「俺は朝陽さん一筋だから」

「ん」

「こんな女、朝陽さんに比べたらアオミドロだし」

「なんだよアオミドロって」

「藻だっけ? 中学の理科で習ったでしょ」

「そういう意味じゃねーよ」

「なんならゾウリムシでもいいよ」

「じゃあオレはミジンコか?」

「朝陽さんは朝陽さん」

「はぁ? 意味わかんね」

「朝陽さんがいれば、こんな女はアオミドロにしか見えねーの」

「あっそ」


 なんだよ、オレはそんな話をしたいんじゃねーよ。

 とりあえず、アイスを大量に食ったら腹を壊したみてーなんだ。

 これは彰に言うわけにはいかねー。

 でないと、アイスを食うのが禁止になりそうだからだ!

 夏にアイス禁止ってどんな拷問だ。

 そんなことになったら、暑くて蒸発してしまいそうだ。

 オレは彰の胡座に乗っかって、腹をあっためるために抱き付いた。

 くそあちーな。

 でも、どうしようもねーんだ。

 暑いのに寒いっていう苦しみの中にいるからな。


「朝陽さん?」

「うるせー黙ってろ」

「甘えたいなら言ってよ。相変わらずツンデレなんだから」

「はぁ? そんなんじゃねーよ!」

「でも、そんなとこもかわいー」


 うぜー…。

 変態彰もどうしようもねーな。

 オレは嬉しそうに抱き締めてきた彰の肩に顎を乗せて、できるだけ腹をくっつけた。



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