TRUST

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大型犬とオレ(side 朝陽)

□罪悪感


 硬い枕が動いた。目ぇ開けたら彰が腕組んで寝てる。

 一浪して大学入ったオレと現役合格した彰は、学部は違えど同じ学年だ。

 ここ結構レベル高いのに、脳筋バカに見えるくせに生意気。

 唇引き結んで眉間に皺寄せてしんどそうに寝てるから、鼻つまんでやった。


「っぶは…ッ!」

「あはは、変な顔」

「ちょ、朝陽さん!俺が窒息死したらどうしてくれんの」

「丁寧に弔ってやる」

「優しいな、朝陽さん」


 どんな夢見てたんだろ。オレらしくないけど気になる。

 こいつはバカみたいにニコニコしてりゃいいんだ。


「朝陽さん、俺三限出てくる」

「ん、行ってこい」

「朝陽さんも行こう」

「あー、彰はワガママだな」


 そろそろ頃合いだから、さっきまで頭乗せてた硬い枕にチョップかます。

 声にならない悲鳴を上げる様子がちょーウケる。

 …と、視界の隅に待ち望んでいた影が映った。


「朝陽」

「…タツヤ」

「おいで、エッチしよ」


 振り返らなくても、彰が息を飲んだ様子でどう思ってるかなんてわかる。


「ん、今行く」


 オレは彰の顔見ないように彰の傍に放置してた鞄を拾った。


「朝陽さん」

「彰、また明日な」

「…うん」


 そんな、捨てられた犬みたいな声出すな。

 タツヤは恋人だっつったじゃん。

 オレ、大好きな彼氏とエッチしに行くんだから。

 冷やかすぐらいしろよ。


「また明日、なんか買ってこいよ。今日サンドイッチ美味かったし」

「っ、わかった」


 なんで罪悪感なんか生まれんだかわかんね。

 なんで明日彰が来ないかもって心配になんのかわかんね。

 だからってバカみたいな約束すんの。もうわかんね。

 タツヤはオレが近付いたらすかさず肩を抱いてきた。愛しくて胸があったかくなった。



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