週刊『彰と朝陽』

しおりを挿む
格安ランチセット─朝陽


 講義の間、ずっと松阪牛のことを考えてるオレ。

 松阪牛って、学食のランチセット何日分の値段がするんだろ。

 魔王はすげーな、医者はすげーな。

 オレ、魔王のことちょっと見直した。


「朝陽、講義終わったぞ」

「あ…ホントだ。サンキュ」

「次は…ってか、来てる」

「ん?」

「経済のスズキセンパイ」

「スズキって誰だ」

「あの人」


 ダチが指差す方向を見たら、小型犬が女に囲まれてた。

 あぁ、スズキって小型犬のことか。

 最近彰にも聞いたのに、また忘れてた。

 オレって、どーでもいいことはすぐに忘れるんだよな。


「…で、次はなに?」

「次は休講らしい。って、いいのか?」

「なにが?」

「スズキセンパイ」

「意味わかんね」

「朝陽に会いに来たんじゃないの」

「ちげーだろ。次がないなら、オレは昼寝してくる」

「おう、またな」


 オレは席を立ってダチと別れた。

 ここを出て芝生のとこに行くには、あの人だかりの横を通るのが早い。

 けど、あの場合は急がば回れだな。


「朝陽!」


 廊下を歩いてたら呼び止められた。

 うぜー、今のオレは昼寝モードなんだ。

 振り返ったら小型犬だったから無視して突き進んでたら、後ろから肩を掴まれた。


「あ、朝陽…待って」

「なんだ」

「話をしよう」

「オレはお前と話すことなんかねーよ」

「僕はある!朝陽のこと、好きなんだ!」

「なっ…!」


 知らなかったとかじゃねーけど。

 こんなとこで叫ばれたらビビるじゃん、普通に!


「好きだ、好きなんだ!愛し」

「うるせー黙れ!とりあえず付いてこい!」

「朝陽…!」


 うぜー、勘違いすんな。

 あんなとこで男が男に告白とか、シャレになんねーんだよ。

 魔王に口説かれる方がマシじゃねーか。


「スズキだっけ、お前」

「マサオミだよ」

「なんでもいー。お前あのまま女に囲まれてればよかったのに」

「僕は朝陽に会いに来たんだ…」

「どーでもいいし」

「ひどい…でも好きだ」

「きめぇ。前はそんなじゃなかったのによ」

「タツヤが相手だから諦めてただけ。でも、須磨なんて」

「タツヤのなにが良くて、彰のなにがダメなんだ」

「須磨が悪いわけじゃないけど、朝陽は須磨なんかありえないって言ってたから」

「あー…そう言ったこともあったな」

「ところで、どこに向かってるの?」

「学食。なんか食わせて。格安ランチセット以外で」

「いいよ!朝陽のためならなんでも奢る」

「え、松阪牛でも?」

「うん。朝陽のためなら一頭まるごと買い付ける」


 なにこいつ、虚言癖でもあるわけ?



- 40/320 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -