週刊『彰と朝陽』

しおりを挿む
パンとミルクの朝─朝陽


 オレの朝ご飯は、ここ最近ずっとレーズンパンと牛乳だ。

 魔王が寄越したレーズンパンが結構あってさ…。

 彰が食えねーからオレの担当になったわけだけど、さすがに飽きてきた。


「彰」

「なーに、朝陽さん」

「これ、チョコチップに見えねー?」

「……ガキの頃、それでレーズンがダメになったんだよね」

「え?」

「学校から帰ったらさ…ほら、うち両親が医者だから、みんなクリニックの方にいて」

「そうだな」

「おやつはいつも買いだめしてある中から、各自勝手に漁って食いなさいって感じだったわけ」

「パラダイスだな」

「まあね。…でさ、ある日俺はパンを見付けたわけ。黒い粒々の入った」

「彰、お前…まさか」

「チョコチップパンだと思って食った」


 マジかよ。

 よくあるガキの勘違いだけどさ…。

 レーズンをチョコだと思って食ったら、マズいかもしんねーな。


「掛けてやれる言葉がねーな」

「あれから、レーズンは俺の敵になった」

「そっか…」

「小学校のクリスマス・スペシャルメニューっつって、レーズンパンが出てきた時はキレたし」

「彰からしたら、スペシャルメニューじゃねーじゃん」

「そうなんだよ!いつものコッペパンのが美味ぇよ!っつってキレた」

「可愛いな彰」

「朝陽さん…慰めて」

「ん」


 なんとなく、抱き締めてやった。

 オレも初めて給食に出たサラダにリンゴが入ってて、野菜だと思って食ったからしばらくリンゴが食えなくなったんだ。

 まぁ今は好きだけどな、リンゴ。

 なんでリンゴをサラダに入れんのか、未だにわかんねー。


「これはオレが食うから、元気出せ」

「うん…朝陽さん好き」

「ん。ほら、トーストできたぞ」


 レーズンパンのいい解凍法ってねーの?

 普通の食パンなら、凍ったままでトーストしたら食えるけど、レーズンパンは焼かねーしな。

 オレはちょっとイライラしながら、レーズンパンを牛乳で流し込んだ。

 やべー、飽きすぎてストレスになってる。



- 38/320 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





「#ファンタジー」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -