週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
パンとミルクの朝─朝陽
オレの朝ご飯は、ここ最近ずっとレーズンパンと牛乳だ。
魔王が寄越したレーズンパンが結構あってさ…。
彰が食えねーからオレの担当になったわけだけど、さすがに飽きてきた。
「彰」
「なーに、朝陽さん」
「これ、チョコチップに見えねー?」
「……ガキの頃、それでレーズンがダメになったんだよね」
「え?」
「学校から帰ったらさ…ほら、うち両親が医者だから、みんなクリニックの方にいて」
「そうだな」
「おやつはいつも買いだめしてある中から、各自勝手に漁って食いなさいって感じだったわけ」
「パラダイスだな」
「まあね。…でさ、ある日俺はパンを見付けたわけ。黒い粒々の入った」
「彰、お前…まさか」
「チョコチップパンだと思って食った」
マジかよ。
よくあるガキの勘違いだけどさ…。
レーズンをチョコだと思って食ったら、マズいかもしんねーな。
「掛けてやれる言葉がねーな」
「あれから、レーズンは俺の敵になった」
「そっか…」
「小学校のクリスマス・スペシャルメニューっつって、レーズンパンが出てきた時はキレたし」
「彰からしたら、スペシャルメニューじゃねーじゃん」
「そうなんだよ!いつものコッペパンのが美味ぇよ!っつってキレた」
「可愛いな彰」
「朝陽さん…慰めて」
「ん」
なんとなく、抱き締めてやった。
オレも初めて給食に出たサラダにリンゴが入ってて、野菜だと思って食ったからしばらくリンゴが食えなくなったんだ。
まぁ今は好きだけどな、リンゴ。
なんでリンゴをサラダに入れんのか、未だにわかんねー。
「これはオレが食うから、元気出せ」
「うん…朝陽さん好き」
「ん。ほら、トーストできたぞ」
レーズンパンのいい解凍法ってねーの?
普通の食パンなら、凍ったままでトーストしたら食えるけど、レーズンパンは焼かねーしな。
オレはちょっとイライラしながら、レーズンパンを牛乳で流し込んだ。
やべー、飽きすぎてストレスになってる。
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