週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
金はないけど暇はある─朝陽
「朝陽、今度食事に行こう」
「断る」
「俺は彰より金持ちだから、乗り換えなよ」
「嫌だ」
うぜー。
魔王が駅までっつったから、彰は同行を拒否るのを諦めたみてーだ。
「彰より経験あるから、テクもあるし」
「テクならオレにあるからいらねー」
「マジ? 試してみたいな。一回抱かせて」
「い、や、だ」
「一回でいいから」
「お前、それで何人口説いたんだ」
「え、そんなにやんないって!これマジだから信じて」
「嘘つきサイテー。魔王なんか大嫌い」
「俺は朝陽が好き」
「きめぇ」
「なぁ、朝陽の欲しいもん買ってやるし」
「いらねーよ」
「…難攻不落って燃えるんだよな」
「うぜー!彰、もーやだ」
彰の兄貴だからって相手してやってたけど、もー限界だ。
オレは、ちょっと前を歩く彰に追い付くように足を速めた。
「朝陽さん、大翔の相手しちゃダメだよ」
「ん。しつけーな魔王は」
「朝陽さんがやっつけたのに、しぶとく復活するしね」
「うん」
「復活ってなんだよ」
魔王がオレの隣に来たから、彰を押し付けて彰の逆隣に回った。
「朝陽さんが大翔の急所を蹴っただろ」
「あれか…正直あれで惚れたんだけど」
「オレ、マゾは無理」
「朝陽のためならサドにもなれる」
「なんなくていーから」
「俺なら、朝陽を松阪牛で満腹にしてやれるけど?」
「え」
松阪牛って、魔王は聞いてたのか?
いつからあそこにいたんだ!
一瞬だけグラッと来たのは内緒だ!
いいか、彰には言うなよ!
「朝陽さん…」
「な、なんだよ」
「揺らいだなんてことはないよね…?」
「あ、当たり前だろ!」
「俺はお金ないし…焼き肉チェーン店が限界だ」
「オレ、彰と食う焼き肉が好きだ」
「暇ならあるから、俺を選んで」
「ん、オレは彰がいーんだ」
「朝陽さん…!」
調子に乗って抱き付こうとしてきた彰を魔王に押しやる。
「そーいうわけだし、もー駅だし、魔王バイバイ」
「また暇な時に、朝陽に会いに来るわ」
「来なくていーから」
「冷たいなぁ…。まぁ、診察には来いな」
「ん、わかった」
やっと魔王から解放された…。
疲労困憊のオレは、彰にプリンを買ってもらうことにした。
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