週刊『彰と朝陽』

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金はないけど暇はある─朝陽


「朝陽、今度食事に行こう」

「断る」

「俺は彰より金持ちだから、乗り換えなよ」

「嫌だ」


 うぜー。

 魔王が駅までっつったから、彰は同行を拒否るのを諦めたみてーだ。


「彰より経験あるから、テクもあるし」

「テクならオレにあるからいらねー」

「マジ? 試してみたいな。一回抱かせて」

「い、や、だ」

「一回でいいから」

「お前、それで何人口説いたんだ」

「え、そんなにやんないって!これマジだから信じて」

「嘘つきサイテー。魔王なんか大嫌い」

「俺は朝陽が好き」

「きめぇ」

「なぁ、朝陽の欲しいもん買ってやるし」

「いらねーよ」

「…難攻不落って燃えるんだよな」

「うぜー!彰、もーやだ」


 彰の兄貴だからって相手してやってたけど、もー限界だ。

 オレは、ちょっと前を歩く彰に追い付くように足を速めた。


「朝陽さん、大翔の相手しちゃダメだよ」

「ん。しつけーな魔王は」

「朝陽さんがやっつけたのに、しぶとく復活するしね」

「うん」

「復活ってなんだよ」


 魔王がオレの隣に来たから、彰を押し付けて彰の逆隣に回った。


「朝陽さんが大翔の急所を蹴っただろ」

「あれか…正直あれで惚れたんだけど」

「オレ、マゾは無理」

「朝陽のためならサドにもなれる」

「なんなくていーから」

「俺なら、朝陽を松阪牛で満腹にしてやれるけど?」

「え」


 松阪牛って、魔王は聞いてたのか?

 いつからあそこにいたんだ!

 一瞬だけグラッと来たのは内緒だ!

 いいか、彰には言うなよ!


「朝陽さん…」

「な、なんだよ」

「揺らいだなんてことはないよね…?」

「あ、当たり前だろ!」

「俺はお金ないし…焼き肉チェーン店が限界だ」

「オレ、彰と食う焼き肉が好きだ」

「暇ならあるから、俺を選んで」

「ん、オレは彰がいーんだ」

「朝陽さん…!」


 調子に乗って抱き付こうとしてきた彰を魔王に押しやる。


「そーいうわけだし、もー駅だし、魔王バイバイ」

「また暇な時に、朝陽に会いに来るわ」

「来なくていーから」

「冷たいなぁ…。まぁ、診察には来いな」

「ん、わかった」


 やっと魔王から解放された…。

 疲労困憊のオレは、彰にプリンを買ってもらうことにした。



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