週刊『彰と朝陽』

しおりを挿む
よし、帰れ─彰


 朝陽さんに抱き締められて死ぬなら、本望かもしれない。

 急にきつく抱き寄せられて、身体が硬いからあちこちいてーけど幸せ。

 あぁ…朝陽さんの腕の中、気持ちいいな…意識が朦朧と…。

 って、俺は朝陽さんを残して死ねないっての!

 ギブアップを伝えるために朝陽さんの腕を叩いたら、窒息死ギリギリで解放してもらえた。


「ぶはッ」

「彰!大丈夫か!」

「あ、朝陽さん…」


 俺は膝の上から起き上がった朝陽さんに笑いかけた。

 朝陽さんが心配してくれてる…幸せ。


「朝陽、彰は殺しても死なないから」

「うるせー、魔王め」

「あ? 魔王?」


 背後から聞こえた、大翔くせー声はなんなんだ。

 いや、朝陽さんが魔王って言ったから大翔なんだけどさ。


「なんで大翔がここにいんだよ」

「暇ができたから、朝陽を口説きに来た。あ、パンの差し入れもあるし」

「パンってあの袋か」

「レーズンパン買ってきてやったから」

「ご苦労。よし、帰れ」

「やだよ。彰ってレーズン嫌いだろ。嫌がれよ」

「バカめ、レーズンパンは朝陽さんが食うから嫌がらせになんねーよ」

「へぇ…。なぁ朝陽、レーズン好きなんだ? 可愛いね」

「朝陽さんに話しかけるな!」


 睨み合う俺と大翔。

 一方朝陽さんは、パンの袋を拾って嬉しそうに中身を見てる。


「彰、見事にレーズンパンばっかだぞ」

「明日から朝陽さんの朝飯にしよっか」

「そーだな、彰の代わりにオレが全部食ってやる」

「さすが朝陽さん」

「だろ、敬えよ」

「超尊敬してる」

「ん」

「朝陽、俺が買ってきたんだけど」

「オレは魔王に頼んでねーけど」

「大翔!朝陽さんに話しかけんなっつってんだろ!」


 俺は立ち上がって、とにかく朝陽さんと大翔との物理的距離を広げた。

 必要以上に関わったら、朝陽さんが汚れてしまうからな。


「朝陽さん、もう帰ろ」

「彰、バイトは?」

「朝陽さんを一人にしたくねーから休む」

「いいのかよ」

「誰かとシフト替えてもらう。晩飯なに食いたい?」

「オレ、親子丼食いてーな」

「いーよ、材料あるし」

「よし、彰さいこー」

「俺も彰の親子丼食いたいな」

「魔王にはやんねーよ」

「大翔、帰れっつったじゃん」

「二人で冷たいこと言うなよ」


 あー、だれかこの男いらね?

 ホストっぽいけど医者だから、たぶん稼ぐんで引き取ってください。



- 34/320 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -