週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
よし、帰れ─彰
朝陽さんに抱き締められて死ぬなら、本望かもしれない。
急にきつく抱き寄せられて、身体が硬いからあちこちいてーけど幸せ。
あぁ…朝陽さんの腕の中、気持ちいいな…意識が朦朧と…。
って、俺は朝陽さんを残して死ねないっての!
ギブアップを伝えるために朝陽さんの腕を叩いたら、窒息死ギリギリで解放してもらえた。
「ぶはッ」
「彰!大丈夫か!」
「あ、朝陽さん…」
俺は膝の上から起き上がった朝陽さんに笑いかけた。
朝陽さんが心配してくれてる…幸せ。
「朝陽、彰は殺しても死なないから」
「うるせー、魔王め」
「あ? 魔王?」
背後から聞こえた、大翔くせー声はなんなんだ。
いや、朝陽さんが魔王って言ったから大翔なんだけどさ。
「なんで大翔がここにいんだよ」
「暇ができたから、朝陽を口説きに来た。あ、パンの差し入れもあるし」
「パンってあの袋か」
「レーズンパン買ってきてやったから」
「ご苦労。よし、帰れ」
「やだよ。彰ってレーズン嫌いだろ。嫌がれよ」
「バカめ、レーズンパンは朝陽さんが食うから嫌がらせになんねーよ」
「へぇ…。なぁ朝陽、レーズン好きなんだ? 可愛いね」
「朝陽さんに話しかけるな!」
睨み合う俺と大翔。
一方朝陽さんは、パンの袋を拾って嬉しそうに中身を見てる。
「彰、見事にレーズンパンばっかだぞ」
「明日から朝陽さんの朝飯にしよっか」
「そーだな、彰の代わりにオレが全部食ってやる」
「さすが朝陽さん」
「だろ、敬えよ」
「超尊敬してる」
「ん」
「朝陽、俺が買ってきたんだけど」
「オレは魔王に頼んでねーけど」
「大翔!朝陽さんに話しかけんなっつってんだろ!」
俺は立ち上がって、とにかく朝陽さんと大翔との物理的距離を広げた。
必要以上に関わったら、朝陽さんが汚れてしまうからな。
「朝陽さん、もう帰ろ」
「彰、バイトは?」
「朝陽さんを一人にしたくねーから休む」
「いいのかよ」
「誰かとシフト替えてもらう。晩飯なに食いたい?」
「オレ、親子丼食いてーな」
「いーよ、材料あるし」
「よし、彰さいこー」
「俺も彰の親子丼食いたいな」
「魔王にはやんねーよ」
「大翔、帰れっつったじゃん」
「二人で冷たいこと言うなよ」
あー、だれかこの男いらね?
ホストっぽいけど医者だから、たぶん稼ぐんで引き取ってください。
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