週刊『彰と朝陽』

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はちみつトースト─彰


 そうそう、スズキマサオミ。

 こないだ大学で、いきなり俺の前に立ちはだかってきた奴。

 まだなんもしてねぇのに、初っぱなから怯えてんの。


「だれ、あんた」

「お、お前須磨だよな。須磨彰」

「名乗れって」

「スズキ、マサオミ」

「あっそ。で、なに」


 無愛想でごめん。

 朝陽さんかダチが一緒にいないとこうなんだ、俺。

 睨み付けたら一層震えるスズキマサオミ。


「…っ!」

「うざ。ビビんなら来んなよ」

「あ、朝陽と別れろ」

「あ? もっかい言ってくんね?」

「朝陽を返せ」

「あぁん?」

「あっ、朝陽は、僕の…だから」

「てめー、殴られたいわけ?」

「ひぃっ…」

「朝陽は俺のなんだけど」

「…僕、あ、あきらめ…ないから」


 それを捨て台詞にして逃げてったスズキマサオミに、当時はただムカついただけだったけど。

 元セフレって朝陽さんの口から聞いたとき、マジで殴っときゃよかったと思った。

 朝陽さんのあんな姿とかこんな姿を見たってことだし…。

 俺の朝陽さんが…。

 俺の朝陽さんなのに…。

 うぅ…泣きそう。

 とか思ってたら、朝陽さんが泣きながら謝りだした。

 俺に嫌われたくなくて泣くとか…ショック受けてる場合じゃねーよな。

 しかも朝陽さんから大好きって言われたから、モヤモヤなんか完全にぶっ飛んだ。

 愛してるって言い返したら、朝陽さんは余計に泣きながらしがみついてきた。

 そんな朝陽さんの背中を撫でてたら、なんでも許せる気になってきた。

 あ、スズキマサオミは許さねーよ?

 とにかく朝陽さんを諦めさせないと安心できねぇし。


「彰」

「なーに、朝陽さん」

「お腹すいた」

「うん、なに食べたい?」

「はちみつトースト」

「え…家庭用でいい?」

「おっきいやつが、いーな」

「お店のやつ?」

「うん、アイス乗っけてほしーな?」


 出た、これマジ最強。

 例の上目遣いのおねだり朝陽さん、泣き止んだ直後バージョン。

 目元と鼻がちょっと赤くなってて、涙で濡れた上目遣いとか逆らえねーよ。

 睫毛に小さな涙の粒とか付いてんだぜ?


「切れてないパン、買ってこないと」

「ん、いってらっしゃい」

「…いってきます」


 これ、別に俺がヘタレなわけじゃねーよ?

 朝陽さんの笑顔のためだし…。

 パン屋、すぐ近くにあるし…。



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