週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
もう一度いってみろ─朝陽
「……………」
「名前は?」
「山田、朝陽です」
「年齢は?」
「21歳」
「身長と体重を」
「あの、そこに書いてある…」
「そうですね。俺は彰の兄で大翔です。大翔さんって呼んでもいいですよ」
「はあ…」
やべー、こいつなんか変だ。
彰の兄貴だからって我慢してるけど、ぜってー変だ。
まず見た目がホストくせー。
「最近、いつエッチしたの?」
「はぁ?」
「答えて」
「き、昨日…」
なんだ、なんだよ!
関係あんのかよこれ!
彰より変態じゃねーか!
でも、医者って逆らえなくね?
そんなのオレだけ!?
「なるほど…」
「あの、」
「このアルコールアレルギーは、消毒なら大丈夫とあるけれど」
「お酒を飲んだら、息が苦しくなるだけで」
「なるほど、では問題ないですね」
冷たい物がいきなり右耳に触って、オレは思わず肩を竦めた。
「可愛らしい耳ですね」
「ちょ、なに…」
「キミ、彰の恋人だよね。あいつをやめて、俺のものになりませんか?」
「なっ!もっかい言ってみろ!」
ガチンッと世にも恐ろしい音が耳元で鳴った。
ジンジンと鈍い痛みと、耳たぶが重くなった感覚。
「はい、お疲れさまでした」
「え…」
「もう付いてるよ。毎日朝晩きっちり消毒してくださいね」
「うそっ」
「本当。ついでに、あの話も本気」
手鏡を手渡された。
ホントだ、金色のがオレの右耳たぶに付いてる。
あんまり痛くなかった。
「すげー…」
やべ、オレってば簡単に魔王戦攻略したよな。
ま、オレだからな…余裕?
「聞いてる?」
「ん?」
「さっきの話の返事は?」
「なんのことだかわかんね、もっかい言って…」
「一回俺と試してみない?」
「っんな、なにを」
ピアスしてない方、左耳に何かが突っ込まれた。
魔王の指っぽい。
「耳は彰に開発された?」
「な、なに言って…」
「感じ方が初々しい」
今度は耳の中に舌を射し込まれて、上半身の力が抜けたオレは、思わず魔王にしがみついた。
「あぁっ…、やだっ!」
くっそ、なんだこいつ…。
ここで屈してたまるか!
「大翔!」
オレが魔王の股間を蹴り上げるのと、彰が飛び込んできたのはほぼ同時だった。
背後でものすごい音がしたけど、器物損壊とかやってねーだろうな。
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