週刊『彰と朝陽』

しおりを挿む
無意味すぎる慰め─朝陽


 ピアスってさ、麻酔もなしにバチンッて穴開けるんだぜ。

 バネの勢いでさ、オレの、この傷一つないヤワい耳たぶに…!

 しかも、来週。

 あれから、彰の精液でナカがムズムズしてきたから風呂入ったり。

 彰とセックスして腹減ったから、ご飯作らせて食べたりした。

 それでもオレの頭の中はピアスのことでいっぱいだった。


「朝陽さん…大丈夫だから」

「うるせー!未経験のお前の“大丈夫”なんてアテになんねー」

「まぁ、そうですよね」

「…彰は怖くねーの?」

「えっ…」

「オレ、は、別に怖くねーけどっ?」

「お、俺も怖くないし」

「そ、そっか。何やってんだろーな、オレたち…」

「あははは…」


 やべー、オレたち確実に二人とも怖がってる。

 ここは年上のオレが、しっかりしないといけねーんだけど。


「あ、彰」

「なーに…?」

「決戦の日の夜ご飯、豪華にしようぜ」

「いいねそれ」

「オレ、ビビンバご飯食いてー」

「マジで!じゃあそれに合わせて焼肉食おうよ」

「超豪華じゃん」

「まず明日、ビビンバご飯の素買わないと」

「あれ、ないときはないもんな」


 ビビンバご飯ってのは、印がないと謳っているくせにブランドと化している店の、炊き込みご飯シリーズの一つだ。

 ちょっと高いけど、あれはマジで美味いと思う。


「デザートはハーゲン様ね」

「やべ、来週が楽しみになるじゃねーか」

「うん、それまでの日なんかいらないよね」

「もう今から宴の夜でよくね?」

「決戦からは逃げちゃダメだ、朝陽さん」

「うっ…」


 ダメだ!慰めが慰めになってねー!

 いくら夜ご飯を豪華にしても、耳たぶにバチンッとやられるのは変わらねー!


「お揃いのピアスしたいから、俺はがんばる」

「彰…」

「朝陽さんの提案、嬉しかった」

「ん、」

「朝陽さん、大好き」

「…うん」

「朝陽さんは言ってくんないの?」

「い、言わなくてもわかれよ」

「俺はバカだからわかんねー」

「す…」

「うん」

「す、き」


 恥ずかしくて、全身麻痺したみたいに動けなくなった。

 そしたら彰が、ピアスやる時にも言ってくれたら麻酔にできるね、とかバカなことを言ったから、彰の硬い腹筋を殴ってやった。


 -END-



- 18/320 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





第4回BLove小説・漫画コンテスト応募作品募集中!
テーマ「推しとの恋」
- ナノ -