週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
寂しがりは嘘つき─彰
恋人が「会いたい」ってサイン出したら夜中でも飛んでいく、なんて話聞いても、俺は絶対ありえねーと思ってた。
それがさ、あったんだよマジで。
朝陽さんが相手ならしょうがないよね。
実際はできてないけど、足さえあればすぐ帰ってた。
真夜中にカレーうどん食って泣いてる朝陽さんを抱き締めに帰ってた。
だけど、電車はねーし、車は免許がねーし、自分の情けなさを痛感した。
真面目に免許を取ろうと思った。
「やっと会えた。朝陽さん…」
朝陽さんはベッドの隅で丸くなって眠ってる。
無意識に俺の場所を空けてるなんて、可愛いな…。
ベッドに潜り込んで朝陽さんの頭を抱き寄せたら、細い腕が伸びてきて俺にしがみついた。
朝陽さんの旋毛にキスをしてきつく抱き締めたら、呻き声が聞こえた。
ちょっと力入れすぎたかもしれねー。
「朝陽さん、おはよ」
「ん…彰…?」
朝陽さんはまだ眠そうな目をしばたたかせながら、俺の胸元でスンスンと鼻を鳴らした。
「なにしてんの」
「…匂い、違う」
「え?」
「彰の匂いじゃねー…」
「あ、これ兄貴の服なんだ」
「嫌だ、彰…彰がいいっ」
朝陽さんは腕を突っぱねて、嫌だ嫌だと激しく首を横に振っている。
なにこれ!
まさかこれが、朝陽さんの本気デレ…?
鼻血が出そうだけど、朝陽さんを汚すわけにはいかねぇ。
「朝陽さん、俺だよ。彰だって」
「違うもん…」
「キスしたら、わかるかな?」
俺は俯いてる朝陽さんを仰向けに転がして、強引に唇を奪った。
「んぅっ、ん、んっ」
久し振りだからやべーな。
朝陽さんごめん…。
心の中で謝ってから、俺はいきなり朝陽さんのパンツの中に手を突っ込んだ。
「…んんっ!」
あ。
朝陽さんの目蓋がパッチリ開いて、目が合った。
「ん、は…彰…」
「朝陽さん…」
「おかえり」
「た、ただいま」
「オレ…なんで彰に襲われてるんだろ…」
「えっと、それは朝陽さんが」
説明。包み隠さず、さっきまでの本気デレな朝陽さんの様子を語って聞かせた。
「……………」
「寝惚けてたっぽいね。俺と離れて、寂しかったんだね」
「寂しくなんかねーよ!あれは演技だ!」
「えー、彰がいいの!ってあんなに可愛く駄々捏ねてたのに」
「あ、あれは盛り上げるための演出で」
「…嘘吐き」
嘘吐きな口は邪魔だから、塞いであげた。
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