週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
堕ちて、そこは闇─朝陽
きゅう、と鳩尾の辺りが切なくなって、意識が浮上した。
目を開けたら、辺りは真っ暗。
ここは闇の中。
オレは、深くて暗い穴の奥底に堕ちたみたいな錯覚に陥った。
隣に、あるはずの温もりがない。
いつも首の下辺りにある左腕も。
オレを朝まで離さない右腕も。
何よりオレが大好きな、落ち着く心音がない。
「…あき、ら」
呟いても、いつも嬉しそうに返事するあいつはいない。
「彰」
じわり、と熱い液体が目に浮かんだ。
オレ、普段結構冷たいかもしんねーけどお前が好きなんだ。
好きって、あんまり言わねーけどさ。
お前が言う回数の半分も言い返せてなかったけどさ。
素直じゃないから可愛くねー時もあるだろうな。
でもお前だってオレのこと、今でも好きなんだろ!?
なんでいねーんだよ…。
なんで、オレの傍からいなくなったんだよ…。
お揃いのマグカップも、ここ最近は使っていない。
同棲し始めた時、彰が買ってくれたやつ。
だってオレ一人で使ったって、彰を思い出すだけだし…。
あれには“あきら”って名前が入ってるから。
すん、と鼻をすすったら、無情にも彰の残り香がオレの心を直撃した。
爽やかな香水の薄まったのと、シャンプーとかいろいろ混じった匂い。
寝室のそこら中に染み付いてる。
彰がここで暮らしていたからこそ、残る匂い。
残り香を意識したせいか、また涙が込み上げてきた。
電話したら、戻ってきてくれるかな…。
オレが素直になれば、彰はオレの傍に帰ってきてくれる?
また笑って、じゃれあえる?
ピアス、どうするんだよ。
オレがねだったら買ってくれたピアス。
病院で穴を開けたら、片方ずつ分けて付けようって約束したのに。
あんなにお揃いだって喜んでたくせに!
「帰ってこいよ、彰…ッ」
切ないんだ、オレのココがしくしく痛むんだ。
お前がいないとダメだ。
もう、お前のじゃなきゃ満足できねー身体になってしまったんだ。
バカ!彰のバカ!
腹減った…彰のご飯が恋しい。
オレをこんなに飢えさせやがって。
帰ってきたら覚えてろよ!
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