週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
それ、もーらい♪─朝陽
彰がオレのためにケーキ買ってきた。
オレって幸せ者だな。
今、彰は洗い物をしてる。
先に食ってていーよって言われたけど、オレは待ってる。
じっと彰の背中を見ながら。
「朝陽さん…」
「なんだ」
「すげー視線が熱い」
「そりゃ気持ちがこもってんだもんよ」
「朝陽さんの愛を受け止めながらする洗い物って最高」
「ヤミツキになるだろ」
「うん、もうたまんね」
「オレもたまんねー!早く食おう」
もう限界だ。
“季節のフルーツたっぷりケーキ”がオレを誘っている。
彰は苦笑しながら洗い物を中断して戻ってきた。
彰が座るのを見届けると同時に、オレはフォークを握り締めた。
「いただきますっ」
オレはさっそく、イチゴを頬張った。
やっぱ“季節のフルーツたっぷりケーキ”でも、イチゴは年中欠かせないよな。
「うまーい!」
「朝陽さんがこんなに喜ぶなら、また買ってこようかな」
「うんうん」
ふとオレは彰を見た。
あらかたフルーツがなくなったケーキに、イチゴが残ってる!
まさか、彰はイチゴが苦手?
だよな、レーズン嫌いだもんな。
マジでありえる。
イチゴ嫌いとか、人生の八割損してんじゃね?
やべ、オレがこいつを幸せにしてやんねーと。
てか、彰が落ち込まないように、明るく貰ってやんねーと。
「彰」
「ん、なーに朝陽さん」
「それ、もーらいっ」
「え…」
うまいっ!
彰はマジで人生損してんな……あれ?
「あ、あきら」
「…あ…朝陽、さん」
「えと、あの…彰クン」
「なんで俺が最後に取っといたの食うかなっ?」
「ご、ごめ…」
「返して」
「も、もーないんだ」
「お約束すぎてさ、なんだよこの展開読めんだよバカってみんな思うかもしれないけどさ」
「…うん」
「朝陽さんに拒否権はないから」
オレ、お約束展開って意外に好きだぜ。
「ねぇ朝陽さん、晩飯にニンニク仕込んだのって、こういうの計算してたわけ?」
「バッカ、んなわけねーだろ!」
彰がケーキ買ってくることまで読めるかよ!
「なんでもいいや、ここでしよ」
「え、さすがに飯食うとこでは無理」
「朝陽さんに拒否権はないって言ったよね」
「っん、」
やべ、マジやべー。
ケーキまだ残ってんのに。
「ん、はぁ…」
「朝陽さんの唇は甘いね」
彰が本気になったらすげぇ。
脱がせんのとか、超速いもん。
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