週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
これの意味知ってる?─彰
アイツ、マジできめぇ!
俺の朝陽さんに服をプレゼントするとか。
めちゃくちゃに痛め付けて、二度と朝陽さんに付きまとわないって誓わせたい。
俺はやり場のない怒りに苛立ちながら、スズキマサオミからのプレゼントを力一杯ゴミ箱に叩き込んでやった。
お菓子とかケーキとか、食ったら終わりみてぇなプレゼントなら、まだいー。
百万歩譲って、タオルなら残るもんでも許す。
トイレ掃除に使えるしな。
でも服とか、マジ絶対許せねー!
「彰……」
「……朝陽さんは悪くないのに、怒ってごめんね」
「それはいーんだ」
「ありがと」
「ドーナツ食えよ。美味いから」
「うん。てか朝陽さん、男が好きな相手に服をプレゼントする意味、知ってる?」
「? なんかあんのか?」
「……やっぱり」
朝陽さんは知らなくてもしかたないか。
俺は溜め息をなんとか堪えて、朝陽さんに向き直った。
キョトンと俺を見つめる朝陽さんが、やたら可愛すぎてやべぇ。
「男が好きな相手に服をプレゼントする意味は……」
「意味は?」
「……それを脱がせたいからなんだよ」
「?」
「えっと、つまり。朝陽さんとセックスしたいから、なんだ」
「セックス……」
「うん。自分が選んだ服を着た相手を裸にして、抱きたいって意味」
絶対あのうぜぇスズキマサオミの野郎は、まだ朝陽さんのことが好きなんだと思う。
だから、朝陽さんがちゃんと奴を警戒するよーに説明を……。
「じゃあ彰が今度オレの服を選んでくれるのは、そーいう意味があったのか?」
「え」
「してーなら直接そー言えばいーだろ。オレ……彰となら、い、いつでもしてーしっ」
「!」
「だから、服選んでも無駄だっ。察してなんか、やらねーからな。オレには服をプレゼントする意味とか、通用しねーから……」
「うん……わかった」
朝陽さん……。
急激に込み上げる愛しさに、俺は堪らず朝陽さんへ腕を伸ばした。
でも、朝陽さんは華麗に俺の腕から逃れると、雑誌を抱えて立ち上がる。
そして、凄まじい捨て台詞を叫んだ。
「誕生日の夜、覚悟してろ! もーこれ以上出ねーってぐらいにしてやるからな!」
「そ、そんな……!」
走っていく朝陽さんと、校内に響き渡る鐘の音。
俺はドリンク剤の準備を検討しながら、午後の講義に出るために力なく立ち上がった。
-END-
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