週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
サングラス─彰
おむすびを口にくわえた朝陽さんが、何故かソワソワしながら雑誌を捲ってる。
せっかく初めて買ってきた雑誌なのに、順番に見てかなくていーのかな。
……とは思っても、どこか必死な朝陽さんに声を掛ける勇気がでない。
そーいうわけですっかり手持ちぶさたになってしまった俺は、昼飯のパンを食べることにした。
メロンパンは朝陽さんも欲しがるだろーから、カレーパンにしよ。
袋を開けてカリッと揚がった美味そーなそれにかぶりつくと、朝陽さんがおむすびを食いながら声を上げた。
「むっ」
「?」
「ん、んぐ……。サングラスがあるぞ!」
「ホントだ。いろいろあるね」
言われて覗き込んだ雑誌には、定番のからブランドの新作までいろいろなサングラスが載ってる。
朝陽さんに似合うのはないかな?
また今年も海に行きたいから、ナンパ対策に掛けさせたいんだけど……。
「これしとけば、彰も目が痛くならねーな」
「うん。でも、すぐなくすんだよね」
「なんでなくすんだ」
「飯食いに店行ったら外すじゃん? 普段眼鏡しねぇから、そのまま忘れて出ちゃうんだ」
「鞄に仕舞えばいーだろ」
「それが、ついテーブルの隅に置いてしまうんだよ」
ちなみに、今までなくしたのは三本ぐらい。
買ってすぐなくすってのを繰り返したから、自分のサングラスはもーいいやってなったんだよね。
欲しい気持ちはあるんだけど、なくさない自信がないから買わない。
「……オレが」
「ん?」
「仮定の話な。これは、例え話だからな! いーか、本気にするんじゃねーぞ」
「う、うん」
「もしオレが彰にサングラスをプレゼントしたら、なくすか?」
「! 俺が朝陽さんからのプレゼントをなくすなんて、絶対あり得ねぇし!」
「そか」
「何があっても死守するよ!」
「ん。当たり前だ」
例え話に激しく食い付いてしまったけど、朝陽さんは満足そーに笑っておむすびを食べ始めた。
大袈裟だって怒られるかと思ったから、軽く拍子抜け。
「あきらっ」
「なーに、朝陽さん」
「そのカレーパン美味いのか?」
「うん。一口食う?」
「ん」
「……美味し?」
「美味ぇ!」
ま、朝陽さんが喜んでるなら、それでいっか。
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