週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
三度目の─朝陽
芝生の上を進むと、彰の情けねー後頭部が見えてきた。
重い気分の原因であるそれに一つ溜め息を吐いて、オレは袋を後ろ手に持ち替える。
ゆっくりと大股で近付いたら、声を掛ける前に彰がオレに気付いて顔を上げた。
「朝陽さん! お疲れ」
「ん」
「ここ暖かいよ、おいで」
「よし、これやる」
ニコニコと間抜け面で嬉しそーに笑う彰の隣に座って、まずオレは邪魔な紙袋を押し付けてやった。
ちょっとビビったみてーだけど、その隙に隠してた袋から雑誌を出してセッティングする。
「朝陽さん、これなに?」
「知らねー」
「え」
「さっき小型犬にもらった。誕生日プレゼントらしー」
「なにそれ! こんな怪しーの、受け取っちゃダメだよ!」
「物に罪はねーだろ」
「まぁそーだけど……。てか、それ雑誌?」
「ん。今買ってきた!」
「初めてのやつだね。一緒に見んの?」
「そーだ」
リサーチを試みるのはこれが三度目。
初回の一昨日はなんとなく目についたアクセの店に連れ込もーとしたんだけど、欲しーのがあるなら買ってあげるって言われて断念した。
リベンジの昨日はテレビで芸能人がしてる腕時計とか見ながら話を振ったんだけど、オレに似合うとかいう話になって失敗した。
三度目の今回こそ余計な話を振らねーで、彰の『これが欲しー』が出るまで待たねーとな!
それを心掛けながら、オレは慎重に一枚ずつページを捲っていく。
すると、あるページで彰が唐突に口を開いた。
「これいーね。ベルト」
「んっ、これが欲しーのか!」
「欲しーっていうか、朝陽さんのチノパンに合いそーだと思って。チャコールグレーのあれ」
「そか。でもゴツくねーか?」
「朝陽さんは腰が細いから、ちょっとボリュームのあるベルトが似合うよ。Tシャツの裾から見せる感じで」
「おう、それいーな」
「今度服見に行くとき、朝陽さんのベルトも見よーよ」
「わかった!」
「楽しみだね」
「ん。早く行きてーな!」
「夜は焼肉だしね」
「オレ、またサンチョで肉包んで食う」
「それ、かなり懐かしー! てかサンチョじゃなくて、サンチュだよ」
「あ、そっか……サンチュ!」
「あはは、かわいーな。いっぱい食おーね」
「ん。腹減ってきた! 買ってきたおむすびでも食うか」
…………って、ちげーだろ!
なにやってんだオレ!
このままだと昨日の二の舞じゃねーか。
オレは若干の焦りを覚えながらおむすびを開封してくわえると、仕切り直すよーにページを捲った。
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