週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
ゴールデン・ディッシュ─朝陽
「美味ぇ!」
ふわっと握ったシャリに、新鮮なでかいネタがたまんねー。
回転寿司のくせに、この店のはかなり質がいーな。
オレは口いっぱいに頬張った大トロをゆっくり味わった後、疲れた顔の彰を見遣った。
「彰もいっぱい食えよ!」
「うん。今サーモン食ってる」
「遠慮すんな。今日は奢りなんだぞ」
「遠慮なんてしてないよ。俺はサーモンが一番好きだからね」
「そか。サーモン三昧か?」
「さっき炙りサーモン食ったから、今はとろサーモン。次は生サーモンにしよーと思ってるんだ」
「すげーな! てか、後でこの一本煮穴子食おーぜ。写真のコレ」
「うわ、煮穴子がシャリに巻き付いてるじゃん。美味そーだね」
「ん。絶対口の中でとろけるぞ!」
煮穴子は締めに食うのがよさそーなボリュームだ。
胃の空き具合を確かめるよーに腹をさすりながら、オレは左手を小さく上げた。
「オヤジ! 特大天然車エビくれ!」
「あいよーっ!」
特大で天然の車エビ。
名前だけで美味そーだよな!
「……おい朝陽」
「ん? なんだ魔王」
「さっきからお前、500円の金皿ばっかじゃねーか」
「銀皿もあるぞ」
「変わらねーよ……」
「あんまり気にすんなよ。彰が幸せそーな笑顔になってんだぞ?」
「それはいい。でも朝陽が勝手に寿司に決めたんだから、ちょっとは遠慮しろよ」
「ケチケチすんなって……っあ、来た!」
「車エビお待ち!」
「サンキュ!」
プリプリの茹で車エビは、明らかに普通のと違う。
オレはそれを魔王に向けて軽く掲げてから、一つ頬張ってみた。
「うめっ」
「あはは。朝陽さんかわいー」
「彰も食え! 美味いぞ」
「ありがと。……ホントら、おいひーね!」
「だろ。もーいっかい頼むか! 賢者レベルも上がったし、豪勢にいくぞ!」
そー言ってまた手を上げよーとしたら、彰がオレを越えて魔王を覗き込んだ。
「大翔」
「うん? なんだ彰」
「寿司まで奢ってくれて、ありがとう。久々にサーモンの寿司食えて、すげぇ嬉しー」
「彰……」
「だから、俺も車エビ食っていー?」
「あ、あぁ。好きなだけ食えばいいよ」
「……ありがと! 朝陽さん、食うよ!」
「よし! オヤジ、さっきの車エビ二皿!」
「あいよっ! 車エビ二丁!」
こーしてまた積み上がっていく金色の皿。
彰も、皿の色こそ250円の紺色だけど、わりと高く積み上げてる。
会計が悲惨なことになるかもしれねーけど、兄弟愛はプライスレスだからいーよな!
-END-
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