週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
戦場─彰
健診は一年生からだ。
始まる前は、体力があるうちに大変なのを済ませられるから楽だ、なんて思ってた。
でも、体力があろーがなかろーが、大変なものは大変。
何故なら、ガキ共が集まればどこでも戦場に変わるからだ。
俺は騒がしー教室内を見渡しながら、名簿にある名前をひたすら怒鳴り散らしていた。
「佐藤と篠宮はどこだー! おーい!」
「さとうはトイレいくっていってたー」
「なんだと? トイレには休憩時間のうちに行きなさい!」
「おれにいわれたって、しらねーし!」
「……あー、そーだな。で、篠宮はどこ?」
「しのみやはおれだ!」
「あっそ。じゃあここにいろ。次だからな」
どっか行きそーになった篠宮を捕まえて、とりあえずイスに座らせる。
ったく、クラスの半分でこれだと先生は大変だな。
ま、一年だと入学したてで浮かれてるだろーし、ガキはこれぐらい元気なのがいーのかもしれねーけど。
「なーなー」
「なんだ」
「おまえ、だいがくせい?」
「うん。てか、お兄さんと呼べ。ガキだからって甘ったれんなよ」
「がきじゃねーし! かのじょいるし!」
「は? 篠宮、もー彼女いんの? ませてるなぁ」
「おまえはいねーんだろ」
「いるし! 超かわいー天使」
「へーぇ」
一年坊主のくせに彼女とか、かなり生意気だな。
俺がこいつぐらいの時は、遊ぶこととおやつのことしか考えてなかったのに。
……あ。
朝陽さんの小学生時代ってどんなのだろ。
こいつらよりやんちゃなイメージ。
太陽みたいに眩しー笑顔で元気に走り回って……。
半ズボンで転ぶのも恐れねぇで、虫取り網とか持ってさ。
「彰ー!」
そうそう、こんな感じで呼ばれそー。
ちょっと遅れたら、まだかーって怒鳴るんだよね。
「……ん?」
「彰! 次はまだか。篠宮って奴!」
「あ、朝陽さん!」
「しのみやはおれだ!」
「よし、次だからオレと来い」
「うん」
「てか何やってんだお前。ちゃんと名簿の順に動かせよ」
「いや、俺はトイレに行った佐藤を待ってて……」
「佐藤ならさっき一人で来て、もー健診受け終わったぞ。今魔王と喋ってる」
「マジで!?」
「しっかりしろよ……彰」
「そーだそーだ。あきらはしっかりしろ」
「篠宮っ、呼び捨てにすんじゃねぇ!」
「あはは! あきらがおこったー」
「よっし行くぞ篠宮! 彰はすぐに次の二人を連れてこいよっ」
「あきらーまたなー」
「……はぁ」
俺は仲良く教室を出てく二人を見送って、深い溜め息を吐いた。
この戦い、レベルがかなり上がりそーだ。
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