週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
白衣の天使─彰
児童の更衣室として用意された空き教室。
小さい机と椅子に懐かしさを覚えながら、俺はぐるぐると教室内を歩き回っていた。
朝陽さん、大翔に変なことされてねぇかな。
ま、大翔は本命のいる実の兄貴だし、朝陽さんも自衛のできる人だからそこまで心配してないけど……。
でも……朝陽さんが触られるなんてやっぱ無理、耐えられない。
朝陽さんは俺のなんだから!
俺は身体をドアの方へ向けて、素早く一歩踏み出す。
すると同時にチャイムが鳴り出して、手を掛けようとしてたドアが開いた。
「あきらっ」
「あ……」
廊下からドアを開けたのは、かわいー笑顔を浮かべた白衣の天使。
勢い余って胸に飛び込んでくるその身体を受け止めると、フワッとシャンプーの匂いが上がる。
…………やべ。
「朝陽さんっ」
愛しさと鼻血が込み上げてきて、俺は堪らず腕の中の天使を抱き締めた。
「ん。寂しかったか?」
「うん……今会いに行こーとしてた」
「そか。でも、もーすぐガキ共が来るから放せよ」
「大丈夫だよ。ガキだし、まだ時間がかかるよ」
「わかんねーだろ! あんま話し込むなって魔王に言われたし、すぐに戻らねーと……」
「あ、大翔には変なことされてない?」
「されてねー。されたら、再起不能にしてやる」
「あはは。そりゃキツいね」
朝陽さんの勇ましー言葉にちょっと安心して力を緩めたら、腕の中から天使が出てってしまった。
「安心しろ! てか夜は魔王が寿司を奢ってくれるらしーから、真面目に働くぞっ」
「え。寿司ってマジで?」
「さっき言ってた。ちょっと彰をからかいすぎたから、夜ご飯は寿司でも食いに行くかーって」
「へぇ……」
今回の報酬に加えて夜飯が奢りで寿司って。
やたら太っ腹でキモいな、大翔の奴。
でも、ホントに奢ってくれるんなら遠慮なく食うけど!
「そーいうわけで、元気出してがんばれ! オレもがんばるから」
「うん、ありがと朝陽さん。大好き」
「ん」
「軽くキスしていー?」
「しかたねーな。手短にしろよっ」
「ありがと」
天使がくれた元気で、ちゃんと仕事ができそーだ。
俺はほんのり熱をもったほっぺを両手で包み込んで、触れるだけのキスを落とした。
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