週刊『彰と朝陽』

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事の真相─朝陽



「おい魔王、あんま彰のこと虐めんなよ!」


 悔しそーに俯きながら部屋を出てく彰を見送ったオレは、調子に乗ってオレの腰を抱いてる魔王のほっぺを、思いっきりつねってやった。


「いへぇ!」

「雇い主だからっておとなしくしてたら、調子に乗りやがって! 借金チャラの話はお前が言い出したんだから、イビるネタにすんな!」

「ふ、ふいまへん!」

「ったく……。だいたい、魔王が『PTAのババアが嫌いだからバイトに来てくれ』っつったんだろーがッ」

「あ、朝陽! 大声で言ったら彰に聞こえるだろ!」

「うるせー黙れバカ。文句あんのか」

「ありません……」

「オレは夜ご飯奢ってくれたらそれでいーって言ったよな?」

「はい」

「それに対して、魔王は何て言った?」

「彰の借金を無しにしたいから雇われてくれって……」

「ん」

「でも、俺に逆らえない彰が珍しくてさ」

「わかるけど、虐めすぎるな。弄るぐらいにしとけ」

「そうだな……ごめん」

「わかればいー」


 魔王は、理由と金額にもよるけど彰……十歳も離れた弟に金を貸すなんて、嫌だったらしー。

 でも、そー言って小遣いとして渡したら彰が怒るから、とりあえず一旦借金ってことにしたそーだ。

 つまり、オレは美しー兄弟愛のために利用されてやったんだ。

 ま、彰の誕生日プレゼント資金ができるから、正直ありがてーんだけどな!


「じゃあ、気を取り直して記入の説明な」

「よし来い!」

「このプリントの山から一枚ずつ取って、ボールペンで上から順番に……」

「プリントにクラスと名前が書いてあるけど、確認すんのか?」

「一応、彰が呼ぶ順番に並べてある。でも俺が診る前に確認するよ」

「わかった。オレは上から順番にアルファベットだな」

「そうそう! 男子しか来ないから、気負うこともないだろ?」

「ん。てか今は、完璧に男女で分けんだな」

「最近いろいろ、めんどくせぇからなぁ」


 女子を診るのは、小児科医で須磨クリニックの跡取りの嫁だ。

 跡取りってのは一番上の兄貴な。

 魔王はしがない皮膚科医だけど、簡単な診察だからって医者になった年からやってるらしー。

 若い医者のが、ガキも身構えねーで済むからだ。


「そろそろ時間だな」

「オレ、彰に声掛けてくる!」

「話し込むなよー」

「おう」


 ドアを開けると同時にチャイムが響く。

 オレは隣の待機部屋にいる彰のところへ小走りで向かった。



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