週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
もうすぐ春─彰
「朝陽さん、美味し?」
「ん。美味ぇ!」
「皮もなかなか美味いね、これ」
「さすが専門店だな」
「次に来た時も、また食おーね」
「ん。今度は彰の更新か」
「そーだね。再来年……かな?」
「まだまだ先じゃねーか!」
「あはは。じゃあ何もなくても、食いたくなったらまた来よっか。免許の更新じゃなきゃ、車で来れるし」
「それもそーだな!」
朝陽さんはクレープがかなり気に入ったらしー。
嬉しそーにニコニコしながら、すげぇ美味そーに食ってる。
もーマジで可愛すぎ。
公園ってか、木の近くが嫌な理由も可愛すぎたし。
聞いた時はホント、力一杯抱き締めたくなって我慢するのが大変だった。
俺は爽やかな風が吹き抜ける中、ジンジャーエールを一口飲んで辺りを見回した。
ここ、実は公園なんだ。
ただし朝陽さんの大嫌いなアイツがいなさそーな、広場になってるとこだけど。
「朝陽さん、食い終わったら散歩しよ」
「散歩……」
「危ないとこには連れてかないから大丈夫。もし毛虫がいても、俺が朝陽さんを守るし」
「絶対、守ってくれるのか?」
「任せて」
「ん……わかった」
「ありがと。朝陽さんと春を感じたいんだ」
「オレも、春は好きだ」
朝陽さんが大嫌いなアイツというのは、毛虫だった。
小学生の時、暖かくなると通学路の街路樹からいっぱい落ちてきてたのが気持ち悪くて、トラウマになったらしー。
今でも暖かくなってきたら、まだ実際に出る時期じゃなくても、街路樹の下を通るのすら嫌なんだって。
そーいや朝陽さん、ゴキブリも苦手だったんだよね。
意外に虫全般が嫌いなのかもしれない。
可愛すぎてやべぇ……。
てかそんな小者、俺がどーにかしてあげる。
ずっと朝陽さんの傍にいて、守ってあげるからね。
「春は朝陽さんに出会った季節だから、特に好きかも」
「あ、そか。もーすぐ一年になるんだな」
「うん……早かったね」
「こんなに一年が早く思えるの、初めてかもしれねー」
「俺も!」
ホントに好きな人が傍にいると、毎日が幸せであっという間だ。
もーすぐ四月。
四月には、朝陽さんの誕生日がある。
実は温泉旅行を計画してるんだけど、いつ言い出そーかな。
-END-
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