週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
嫌い嫌いっ大嫌い!─朝陽
ちょうど今ごろの、もーすぐ春だなって時期の公園。
あったけーから、小さい花が咲いてたり桜の蕾が膨らんでたりするんだよな。
大抵の奴は好きな空間だと思う。
散歩したり、ボールとか持ってきて遊んだりしてさ。
でも、オレは。
「……いやだ」
「え」
「あっ」
思ったことをうっかり口にしてしまったオレは、慌てて自分のそれを手で覆った。
でも、彰に聞こえてしまったからもー遅い。
気まずい空気を感じながら、とりあえず歩く速度を落として俯く。
すると、彰はそんなオレを気遣うよーに歩調を合わせて、小さい声で囁いてきた。
「朝陽さん。何がいや?」
「………………」
「クレープは、楽しみなんだよね?」
「ん……」
「じゃあ外で食うのがいや? それとも公園って場所?」
「…………公園、が」
恥ずかしーけど、言ってしまったもんはしかたねーから軽く開き直ってやった。
でも別に、公園自体は嫌いじゃねーんだ。
ただ、そこにいる生き物が……。
厳密に言えば春から初夏にかけて発生するアイツらが、大嫌いなんだ!
嫌いで嫌いで、想像するだけで鳥肌が立つ。
怖いんじゃねーからな、嫌いなだけだからな!
「公園じゃなかったら平気?」
「ん」
「そっか。でも店の中は、うるさいアオミドロ共がいそーなんだよね。公園じゃない外にしよ」
「アオミドロ……。お前、まだそんな言い方してたのか」
「あ、うん。朝陽さんに比べたら、あいつらは実際アオミドロ以下だよ」
「ん……そか」
恥ずかしー奴だ。
オレは熱が上がったのを感じて、軽く彰から目を逸らす。
そしたら、駅を出た時に見付けた派手な店が視界に入ってきた。
「あ、クレープ屋だぞ!」
「ちょっと並んでるけど、テイクアウトならすぐに買えそーだね」
「そーだな。てか、どこで食うんだ?」
「あの木の下は? 駅前だから、ちょっと人通りがあるけど」
「! や、やだっ」
「え」
木の下なんて、アレが落ちてくる定番の場所じゃねーか!
公園と何一つ変わらねー。
いや、むしろ状況は悪くなってる。
オレは観念して、全部話す覚悟を決めた。
できるなら隠し通す方向で行きたかったけど、彰との将来を思えば言っとくのが賢明だ。
今のうちに恥をかいとけば、あとは楽になるんだからな。
←Series Top
|