週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
バカだけど憎めない─朝陽
クレープの中身を考えてたら、お腹が減ったけどなんとか講習を乗り切れた。
あとは写真撮影して、免許を新しーのと交換したら終わりだ!
そしたらいよいよ、クレープが食える。
オレは講習が終わったらすぐに部屋を飛び出して、彰のとこに向かった。
「あきらっ」
「朝陽さん! お疲れ」
「ん。なんかご機嫌だな」
「そ、そーかな。朝陽さんに会えたからかも」
「嘘吐くな」
「嘘じゃないし!」
「でも、それだけじゃねーだろ」
「うぐぐ……」
「オレに会えた以外の理由もあるはずだ。ニヤニヤしやがって」
「えっ。俺、ニヤニヤしてる!?」
「口元がすげー緩んでるのに、自覚できてねーのか。おじーちゃんかお前は」
「マジで!」
彰は慌てたよーに自分のほっぺをペタペタ触って、必死に表情を引き締めてやがる。
あれは、何か企んでる顔だ。
どーせオレが関わってる変態じみたことだろーけど、一応聞き出すか。
バカなことだったら殴って、止めてやらねーとならねーからな。
ま、常識の範囲内なら許してやらなくもねーけど。
「それで、何が嬉しーんだ」
オレは写真室へ移動する最中、なんとか表情を引き締めた彰を揺さぶりに掛けてやった。
「あ、えっと……あの」
「彰が変態なのはわかってるから、気にせずに言ってみろ」
口ごもる彰に、逃がさねーって気迫を込めて畳み掛ける。
すると、観念したよーに息を吐いた彰が焦りながら話しだした。
「朝陽さんの、古い免許を……返して、もらおーと……」
「オレの免許?」
「写真が欲しくて」
「そーいやこないだ、オレの免許見てやたら興奮してたな」
「うん……」
確かこいつ、鼻血が出そーだとか言ってたよな。
ただのガキくせーオレなのに。
ま、彰はオレにベタ惚れだからしかたねーか。
「……オレが言えば、返してもらえるのか?」
「え」
「免許。どーせお前が言ってもダメだろ?」
「俺が訊きに行った時、別に何も言ってなかったけど……」
「バカか。誰が他人の古い免許を欲しがると思うんだ。普通本人のって前提で言うだろ」
「あ、そっか」
「彰は間抜けだな」
「朝陽さんのことしか考えてなかった……」
ったく、こいつは。
オレが絡むとすぐバカになりやがる。
でも、理由が理由だし憎めねーんだよな。
なんだかんだ言って、嬉しーし……。
言ってやらねーけどな!
「じゃあ並んでくるから、彰はここで待ってろっ」
オレは、熱い顔をごまかすよーに彰の硬い腹筋を軽く殴って、列の最後尾へ走った。
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