週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
確固たる目的─彰
「めんどくせー……」
ちょっと年季の入ったソファに座った朝陽さんが、俺に背中を半分預けながら深く溜め息を吐く。
左半身に掛かるその重みを今すぐ抱き締めたい!
……けど、俺は我慢しないとならない。
それは、ここが約二ヶ月前に俺が試験を受けた、運転免許更新センターの待合所だから。
今日やって来た理由は、朝陽さんの免許を更新するためなんだ。
「朝陽さんは初回だから……講習は二時間か」
「長すぎるだろ! マジやってらんねー」
「うんうん。何の説明にそれだけ掛かるのか謎だね」
「だろ。だから彰も一緒に受けろよ。一人はつまんねーし」
「俺も朝陽さんと一緒にいたい……けど、ダメだよ。完全に部外者だし」
それに、俺は朝陽さんの古い免許をゲットするって目的がある。
返してもらえるのかどーか、質問しに行かないと。
ちなみにもしダメだったら、写真の部分だけでもって食い下がるつもり。
あのかわいー朝陽さんの写真を捨てるとか、マジであり得ないから!
絶対、泣き落としてでも手に入れてみせる!
もー気合いが入りまくりで、今朝なんか朝陽さんより早く起きてしまったぐらいだ。
「だから……ごめんね、朝陽さん」
「ん……」
寂しそーな朝陽さんが可愛すぎて、鼻血が出そー。
でもこれは、どーしても譲れないんだ。
てか、普通に『お前誰だ』とかって怒られそーだし。
なんか元気付けてやれないかな……。
「あ、そーだ。交付が終わったら、なんか美味しーもの食いに行こーよ」
「美味しーの?」
「うん。甘いものとか」
「それならオレ、クレープがいーな」
「もしかして、さっきの駅前にあった店?」
「彰も見付けてたのか」
「俺の試験の時にね。朝陽さんと遊べそーなとこがないか、軽く見といたんだ」
「そか。彰はデート好きだからな」
「朝陽さんとだからね」
「当たり前だ。……よし、早く終わらせてクレープ食いに行くぞ!」
急に笑顔になった朝陽さんが、早く始まらないかとソワソワしだした。
そんなにクレープが楽しみなんて、かわいーな。
クレープに嫉妬してしまいそーなぐらいだ。
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