週刊『彰と朝陽』

しおりを挿む
確固たる目的─彰



「めんどくせー……」


 ちょっと年季の入ったソファに座った朝陽さんが、俺に背中を半分預けながら深く溜め息を吐く。

 左半身に掛かるその重みを今すぐ抱き締めたい!

 ……けど、俺は我慢しないとならない。

 それは、ここが約二ヶ月前に俺が試験を受けた、運転免許更新センターの待合所だから。

 今日やって来た理由は、朝陽さんの免許を更新するためなんだ。


「朝陽さんは初回だから……講習は二時間か」

「長すぎるだろ! マジやってらんねー」

「うんうん。何の説明にそれだけ掛かるのか謎だね」

「だろ。だから彰も一緒に受けろよ。一人はつまんねーし」

「俺も朝陽さんと一緒にいたい……けど、ダメだよ。完全に部外者だし」


 それに、俺は朝陽さんの古い免許をゲットするって目的がある。

 返してもらえるのかどーか、質問しに行かないと。

 ちなみにもしダメだったら、写真の部分だけでもって食い下がるつもり。

 あのかわいー朝陽さんの写真を捨てるとか、マジであり得ないから!

 絶対、泣き落としてでも手に入れてみせる!

 もー気合いが入りまくりで、今朝なんか朝陽さんより早く起きてしまったぐらいだ。


「だから……ごめんね、朝陽さん」

「ん……」


 寂しそーな朝陽さんが可愛すぎて、鼻血が出そー。

 でもこれは、どーしても譲れないんだ。

 てか、普通に『お前誰だ』とかって怒られそーだし。

 なんか元気付けてやれないかな……。


「あ、そーだ。交付が終わったら、なんか美味しーもの食いに行こーよ」

「美味しーの?」

「うん。甘いものとか」

「それならオレ、クレープがいーな」

「もしかして、さっきの駅前にあった店?」

「彰も見付けてたのか」

「俺の試験の時にね。朝陽さんと遊べそーなとこがないか、軽く見といたんだ」

「そか。彰はデート好きだからな」

「朝陽さんとだからね」

「当たり前だ。……よし、早く終わらせてクレープ食いに行くぞ!」


 急に笑顔になった朝陽さんが、早く始まらないかとソワソワしだした。

 そんなにクレープが楽しみなんて、かわいーな。

 クレープに嫉妬してしまいそーなぐらいだ。



- 273/320 -

[≪prev | next≫]



 ←Series Top





人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -