週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
勝負の行方─彰
「そこでオレが、コーナーしか意識してねー魔王の穴を突いて、こー……上手くコース取りしたんだ」
「えー、最初から仕組んでたわけ!?」
「当たり前だ!」
「すげぇ朝陽さん!」
夜飯をテーブルに並べてたら、朝陽さんが今日のゲーム大会の作戦を聞かせてくれた。
大翔に勝つために、俺と先に対戦させて癖を見てたらしー。
ちなみにメインメニューは、ハンバーグポトフ。
普通ポトフっつったらウインナーだけど、ハンバーグのが絶対に美味い。
スーパーの肉コーナーで安売りしてる生ハンバーグを買ってきて、焼き色だけ付けたら千切って油ごと入れるだけ。
肉汁がスープに溶け出すから、コンソメだけじゃ味気ない野菜でもかなり美味くなるんだ。
「だろ! 崇めてもいーんだぞっ」
「うん、超崇める。朝陽さん大好き」
「ん。てか、早く食うぞ!」
「腹減っちゃった?」
「彰のハンバーグポトフは美味ぇからな」
「そーだね。朝陽さん、ポトフ嫌いだったのにね」
「でも、これ食ってみてすぐ好きになった」
「すげぇ嬉しーな」
俺の作る飯で、朝陽さんの好き嫌いが減ってく。
それが、すげぇ幸せ。
朝陽さんと同棲するよーになってから、ホント料理が楽しーんだよね。
いや、生活そのものが楽しーのか。
朝陽さんがいるってだけで、何やってても充実してるんだ。
別行動してる時でもそーだからすごい。
去年、朝陽さんに出会うまでのだらしねぇ俺が嘘みたいだ。
ダラダラと大学行って、寄ってくる女とテキトーに付き合って、飯も食えりゃなんでもいーやって感じだったしな。
今日はこの後、朝陽さんとゲームでもしながら普通にいちゃついてたい。
セックスするよりも、ただラブラブしてたいって気分なんだ。
……でも、それが俺だけの気持ちだったら意味がない。
俺は、朝陽さんの機嫌を窺うよーに話しかけてみた。
「朝陽さん、美味し?」
「ん。美味ぇ!」
「よかった」
「まだあるんだろ?」
「うん、明日の朝も食えるよ」
「トマトアレンジがいーな」
「いーよ。朝飯だし、軽めのリゾットにする?」
「美味そーだな!」
機嫌はよさそーな感じだ。
じゃあ思い切って勝負に出るか?
寝るまでゲームしよって言い方なら、角が立たないよね。
「てか朝陽さん、この後のことなんだけど……」
この勝負の行方は、言うまでもなく────。
-END-
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