週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
燃える瞳─彰
朝陽さんの燃えるよーな眼差しが、大翔をまっすぐ捉えてる。
真剣な横顔はキリッとカッコよくて、マジで惚れ惚れしてしまう。
かわいーしカッコいーし、朝陽さんは最高だな。
「覚悟しやがれ、魔王ッ!」
「ふははは、かかってくるがいい!」
それはまるで、勇者と魔王の一騎討ち。
コントローラーが剣に見える……なんてことはないけど。
俺は今マグカップ片手に、睨み合う二人を見守ってる。
最初に俺と大翔で対戦したから、今は休憩タイムなんだ。
ちなみに、その対戦の結果は……。
「彰……お前の死は、無駄にしねーからな」
「朝陽さん……」
「天国でオレを見ててくれ。てか、そこが天国ゾーンだから動くなよ」
「あ、うん」
「よし。……魔王め、オレの“地ずり残月”を受けるがいい!」
「ちょっ、なにそれ朝陽さん。すげぇかっこいーね」
「だろ。こないだ最強技をネットで調べてたら、見付けたんだ。昔のゲームの技らしー」
「ネットは便利だよね」
「ん。賢者彰も魔法研究しろよ」
「が、がんばります」
あーあ、墓穴掘っちゃった。
てか今の会話でわかる通り、俺は大翔に負けた。
ビギナーズラック……ならいーんだけど、大翔は普通にコーナリングが上手かったんだ。
伊達に、趣味の悪い外車を乗り回してるわけじゃないらしー。
「じゃあ朝陽、始めるぞ」
「わかった。オレは負けねーからな!」
「俺も、車好きとして負けられねぇから本気でいくぞ」
車種やコースの選択が終わって、スタート画面になった。
……てか、朝陽さんの方がやや後ろのスタート位置だから不利じゃん!
「朝陽さんがんばれ! 大翔の車なんか横転の末に大破して爆発しろ」
「うわ、ひっでぇ彰。俺は血の繋がった兄貴だぞー」
「うるせぇ。実際に乗ってるわけじゃないからいーだろ」
「俺は彰のこと、好きなのに……! シクシク」
「きめぇ」
「魔王! 先にいくぞっ」
「あーっ、始まってるじゃねぇか!」
「バカめ」
朝陽さんがうまくスタートダッシュを決めた。
それを見て焦りながら走り出す大翔。
俺はリアルな街中が舞台のレースを見ながら、朝陽さんだけにエールを送り続けた。
←Series Top
|