週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
もう少しだけ─朝陽
「おーっす朝陽!」
思った通りコートを着てねー魔王が一人、機嫌良くリビングにやって来た。
「おす。まーここに座れ」
「あ、なにそれ。プレステ3買ったのか」
「ん。彰と対決してみろ」
「えー朝陽としたいなー。つーかこれ、手作りチョコのお返し」
「オレももらったのに……サンキュ」
「中身は“すき焼きセット”だぞー」
「マジか! わざわざ買ったのか?」
「あの人が食いたいって言うから、注文したついでにな」
「本命だな!」
「うん、最近よく誘われるようになってきてさ。今日も相手の家で二人きり。たっかい焼酎呑ませてくれるらしい」
魔王の奴、本命となかなかうまくやってるみてーだ。
まだ告らねーのかな。
何もしてやれねーけど、うまくいってほしーな。
「……もう少しだけ、したら」
「んっ?」
「あの人の誕生日に会う約束が取れたら、告白するよ」
「そか……! わかった、がんばれ!」
「成功したら、すぐ朝陽に見せてやるからな」
「ん。ラブラブなとこ、見せ付けにこいよ」
その日は絶対、四人で宴会になるな!
オレはそう遠くなさそーな未来を想像して、なんか幸せな気持ちになった。
同性愛者だからってこそこそしてた去年までのオレが、嘘みてーだから。
なんか、彰が好きだって堂々としてていーんだって思えるよーな、不思議な感じなんだ。
てか、今夜は彰とご飯食った後も風呂出た後も、くっついてゲームしてーな。
今日はセックスより、普通にいちゃついてたい気分なんだ。
そんな風に予定を立ててたら、彰がドスドスとうるせー音を立てながらリビングに戻ってきた。
「大翔っ、あんな厄介なコート押し付けんな! なんで俺が」
「うるせーぞ彰。これ肉だから、冷蔵庫に入れとけ」
「あ、うん」
オレは魔王のコーヒーを注いでやるために立ち上がったついでに、彰に“すき焼きセット”を押し付けてやった。
さっそく中身を見た彰が、ビビって声を上げやがる。
「うわ、なにこれ。すげぇ霜降り肉」
「魔王からチョコのお返しだ。本命と食うから、ついでに買ってくれたらしー」
「あー……それであいつ、機嫌いーんだ?」
「ん。あんま怒ってやんなよ」
「朝陽さんは恋する大翔に甘いなー。ちょっと妬ける」
「夜には確実に二人になれるんだから、我慢しろ」
「……うん。早くいちゃつきたいな」
応援してるだけだから、妬くことねーのに。
しかたねーから、彰が冷蔵庫を開けた瞬間にキスしてやった。
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