週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
オレの方が速かった!─朝陽
「今の、絶対おかしーだろ……」
彰がおかわりのコーヒーを淹れて来るって言うから、一人で一回やってみたんだ。
そしたら、オレの方が一瞬速かったのに他の奴に負けたんだ!
マジでありえねー!
オレはロールケーキにフォークをぶっ刺して、八つ当たりするよーに食ってやった。
イラついたら甘いもんで中和するに限るからな!
「んっ。美味ぇな!」
ホワイトデー限定だからってんで、昨日彰に買ってもらったケーキだ。
白いスポンジで生クリームと白いイチゴを巻いてある上に、粉砂糖が振り掛かってる。
ちょっとイチゴが特殊だから、どーかと思うだろ?
でも、美味ぇんだこれが!
イチゴなのに、パインみてーな味なんだぞ!
昨日試食させられて、まんまとハマったんだよな。
てかオレの分はあと一切れだから、大事に食わねーと……。
そー思いながらコーヒーを待ってたら、インターホンの音が響いた。
同時に、マグカップを持って向かってくる彰の顔が嫌そーに歪む。
「うわ、最悪」
「? なんだ?」
「大翔が来た。たぶん」
「そか。さっそく倒すかっ」
「やっぱり? もー、まだ朝陽さんとゲームしてないのに。大翔マジうぜぇ」
「オレとならいつでもできるだろ」
「そーだけど……」
「とりあえず、ほっといてもうるせーだけだから出てこい」
「……わかった」
彰がマグカップを置いて、渋々リビングから出てった。
オレはコーヒーを飲みながら、二人で遊べる“アーケードモード”に切り替える。
彰は嫌がりそーだけど、先に魔王と兄弟対決をさせるつもりだ。
実は、それを見学してコツみてーなものを掴もーって算段なんだ!
もしコツがわかんねーでも、彰と魔王のクセを見抜けば出し抜けるだろ?
で、後でオレが参戦した時に余裕で優勝。
そしたら彰はオレのテクに感心して、惚れ惚れしやがるはずだ。
さっき思い付いたんだけど、我ながら画期的なアイディアだよな!
「はぁ!? 大翔、てめぇ! 俺はクローク係じゃねぇぞ!」
魔王にコートを押し付けられたらしく、廊下で彰が怒鳴ってやがる。
ふっ……精々兄弟でいがみ合って、本気の戦いをするがいー!
そしてオレに穴を見せろ!
オレはほくそ笑みながら、彰のマグカップの横と魔王に座らせる場所にコントローラーを設置してやった。
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