週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
何でも一つ、従います─彰
のぼせた朝陽さんが気を失ってたのは、ほんの数分だった。
それでも俺が気絶させてしまったことには変わりない。
俺はぐったりした朝陽さんにジュースを飲ませたりアイスを食べさせたり、甲斐甲斐しく世話を焼いた。
それから、俺の不注意だったって謝ったんだ。
お詫びになんでも一つ、朝陽さんの言うことを聞くからって。
すると朝陽さんは何故か安心したよーに笑って『気にするな』って言いながら、ちょっと考える素振りを見せた。
そして、あるお願いを聞いてほしーって言ってきたんだ。
◆ ◆ ◆
「絶対だからなっ!」
帰りの車中、朝陽さんが通算五回目の念押しをしてきた。
もちろん、俺がラブホでした約束に対してだ。
って言っても、別に俺を信用してないってことじゃない。
ただ楽しみでしかたないあまりに言わずにいられないってやつ。
その証拠に、朝陽さんがニコニコしててすげぇかわいー。
だから、俺も毎回笑顔でそれに応える。
「うん、一緒に買いに行こーね」
「買うだけじゃダメだぞ」
「うんうん、いっぱいしよ。たまに大翔も巻き込む?」
「それいーな、人数が多い方が楽しそーだ。てか、魔王は弱そーだな!」
「したことないと思うから弱いよ。悔しがる大翔は見ものだね」
「ん。あいつ、結構プライド高そーだしな」
「やべ、早くズタボロにしてやりてぇ」
「あんまり打ちのめしたら、また泣くぞ」
「いーんだって。どーせ嘘泣きだし」
ちなみに約束の内容は、今度一緒にゲーム機を買いに行くこと。
朝陽さんはラブホでセックス以外にしたいことが二つあったらしーんだ。
一つ目はマッサージチェアでゆったりすることで、二つ目は俺と二人でゲームをすること。
のぼせたせいでできそーにないから、いつかそれを叶えてほしーっていうのが朝陽さんのお願い。
なにこの可愛すぎるお願い!
……やべ、思い出したら鼻血が出そーになってきた。
「ん、どーした?」
込み上げるツンとした痛みに鼻を押さえると、朝陽さんが俺を見て小さく首を傾げた。
「もー花粉が飛んでるからね!」
「そか。彰は花粉症だったんだな」
「あ……うん。たぶん」
「たぶんってなんだ」
「……すいません、思い出し鼻血です」
「そんな言葉、初めて聞いたぞ」
「俺も初めて言ったよ」
「ったく、しかたねーな彰は!」
「うぅ……」
朝陽さんが溜め息を吐きながらティッシュを捩って、鼻に詰めてくれる。
なんだかんだで優しー朝陽さん、大好き。
マッサージチェアも近いうちに絶対叶えてあげるからね。
俺は、四月にやって来る朝陽さんの誕生日の計画を練り直すことにした。
-END-
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