週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
期待外れ─彰
車がファミレスの駐車場を出て、幹線道路に出る。
もー完全に陽が落ちて、辺りはすっかり夜だ。
「……疲れたな」
「うん。辛かったら代わるよ?」
「うるせー。彰は朝から運転してたんだから寝てろ」
「もう……寝るわけないじゃん。まぁ腹が膨れたから、ちょっとは眠いけど」
「ほらな!」
動物を見てたのは昼過ぎから夕方までの短い時間だったけど、俺も朝陽さんもたっぷり楽しんだと思う。
その証拠に、二人ともくたくただ。
だからって朝陽さんががんばってくれてるのに、一人でのうのうと寝られない。
それに今日は、ラブホに泊まるわけだし。
あ……ちなみに下調べだけど、ちゃんとやっておいたから。
インターネットだけじゃ不安だと思って、直接電話もしてみた。
責任者出してもらって、確かに『男同士でも泊まれる』って言ったのを聞いたし大丈夫。
言質を録るのはさすがに大袈裟だと思ってしなかったけど。
「彰っ」
「なーに、朝陽さん」
「ラブホすげー楽しみだな!」
「あ、そーだね。広い風呂だといーな」
「一緒に入るのか?」
「うん、当たり前じゃん」
「てか風呂でヤるか!?」
「のぼせるよ?」
「彰がのぼせたら、特別にオレがベッドまで運んでやる」
「えー。のぼせるのは朝陽さんだし!」
「オレはキリンにビビる彰みてーに、軟弱者じゃねーし」
「あ、あれは舌の色が……!」
「でも、ビビりすぎてガキに注目されてたぞ」
「うぅ……」
「降参するか?」
「……うん」
「よし!」
もー、朝陽さんはしょうがないな。
疲れてるのに、ラブホに着いたらはしゃぎそーだ。
まぁかわいーからいーけど。
そんなことを考えながら、目的の建物を探しつつ朝陽さんをチラ見する。
嬉しそーにニコニコしてて、マジ可愛すぎ。
「あっ」
「ん?」
見えてきたホテル街の中、一番入りやすそーな角に目的のラブホがあった。
小綺麗で落ち着いた外観のビルってのが、すげぇ好印象。
「あれだよ、俺たちが泊まるラブホ。看板があるでしょ」
「……マジかよ」
「? どーしたの?」
「ビカビカした城じゃねー。期待してたのに」
「え」
「ラブホのくせに、澄ましやがって。……あ、奥のアレはビカビカでいーな!」
朝陽さんは下品なほど派手な、典型的ラブホを期待してたらしー。
部屋に入ったら、奥のビカビカしたラブホを写真に撮るって意気込んでる。
とりあえず今日は平日だし、余裕で部屋を選べるはず。
一番高い部屋があったらいーな。
-END-
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