週刊『彰と朝陽』

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おやつ─朝陽



 シカの奴ら、オレが軽く威嚇しただけでビビって固まりやがった!

 その間に彰が群れの中をすり抜けたから、草食ゾーンは悠々と見て回れた。

 さすがオレだよな。

 かっこよすぎて、彰も惚れ直したみてーだった。

 もーこれ以上惚れようがねーのに……。


「朝陽さん、ここはいろんな動物に餌やりができるらしーよ」

「マジか! オレも餌やりしてーな」

「いーよ。買ってあげる」

「よしっ」


 オレたちはちょうど、車を降りてウォーキングサファリに入ったとこだ。

 ここは主に、鳥類とか小型動物がいるらしー。

 名前にサファリってあるだけあって、放し飼いになってるケージの中を歩ける造りだ。

 てか、ずっと車で座ってたから、歩くと身体が伸びて気持ちいー。

 風はちょっと冷てーけど、太陽が出ててポカポカだから却って清々しーし。


「みんな、食うかな」

「朝陽さんがくれるんだから、絶対食うよ」

「ま、当然だな!」


 地面で踞ってる鳥を観察しながら、餌やりができるとこを目指す。

 鳥には悪いけど、オレの頭の中は餌やりでいっぱいだ。

 軽く急ぎ気味でケージから出ると、まずゾウのでけー顔が目についた。

 オレたちがさっき、車から見てきたゾウだ!


「あ、ゾウに餌やりができるみたいだよ」

「すげーな! 車から見えてた見晴台っぽいの、ここだったんだな」

「餌やりでこっちに引き付けて、車の安全を確保してるのかな。うまくできてるね」

「ん」


 彰が“どうぶつのえさ”の自販機にお金を入れたら、餌の入った紙コップが出てきた。

 見ると白菜やキャベツ、リンゴなんかが入ってる。

 オレはさっそく、餌やりに夢中なガキに混ざりに行った。

 櫛形のリンゴを柵の外に差し出したら、ゾウが鼻で掴んで口に運ぶ。

 ちゃんとモグモグしてんのが、やたらかわいー。


「見ろ彰っ! 美味そーに食ってるぞ」

「ホントだ。かわいーね」

「身体がでけーから、こんなのじゃ全然腹一杯にならねーだろーな」

「俺たちだとゴマ食ってる感じ?」

「腹の足しにならねー!」

「あはは。おやつ食べすぎたら、夜飯が食えなくなるからね」

「そーだな。てか、ちょっと腹減ってきた……」

「あはは。ここ見終わってお土産買ったら、飯食いにいこーね」

「ん。よし、彰もやってみろ!」


 オレは残りの野菜を彰と一緒にあげて次に進んだ。

 この後キリンにも餌やりしたんだけど、舌がすげーエグい色だった。

 彰が情けねー顔でビビってたのがおもしろかった!



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