週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
密室─朝陽
三月に入って、だんだん暖けー日が増えてきた。
オレたちがサファリパークに来た今日も、絶好の行楽日和。
さっきの肉食ゾーンの動物も気持ちよさそーに太陽を浴びてて、すげー和んだ。
特に、あの恥じらってた雄ライオンがオレのツボだった。
なんか、情けねーとこが彰にそっくりだったからな。
オレは次の草食ゾーンに続くゲートが開くのを待ってる情けねー顔の彰に、ポケットから出した飴を投げつけてやった。
「っわ」
「飴でも食え」
「ビックリした……ありがと」
彰は大きなあくびをしながら、オレが投げたパインアメを口に入れた。
パインアメってのは、真ん中に穴のあいたアレだ。
素朴な感じで美味ぇよな。
「てか、かなり眠そーだな」
「うん……朝が早かったから」
「今日泊まりにして、よかっただろ」
「そーだね。今夜はあんまり動きたくないかも……」
「セックスも動かなくていーぞ。今日はオレが乗るからな」
「え。セックスなら動きたいんだけど」
「彰はエロいことになると、途端に元気になるな」
「朝陽さん限定でね」
「そ、そんなの当たり前だっ」
「うん。朝陽さん大好き」
「ん……オレも」
ここ、すげー天気のいーサファリなのに。
顔が熱くなってきて、オレはごまかすよーに窓の外を見た。
そしたらちょうど前が空いたのかゲートが開いて、ガイドラジオと車が動きだす。
「朝陽さん、シマウマだよ」
「! どこだ!?」
「こっち、俺側」
「見えねーぞ」
「もーちょいこっちおいで」
「っあ!」
グッと力強く肩を抱き寄せられる。
彰に乗っかるみてーになったら、やっと向こうの方にシマウマが見えた。
「見えた?」
「ん……」
「てか朝陽さん、さっきドキッとしちゃったでしょ?」
「あ、彰が悪い!」
「うん。車の中だから大丈夫だよ」
「でもっ」
「密室だから。ね?」
「バカ……!」
彰は本気になったら力が強いから、腕を突っ張っても暫く放してくれなかった。
しかも調子に乗って、軽くキスまでしてきやがる。
ムカつくから、オレは彰の硬い腹筋を思いっきり殴ってやった。
痛そーに呻いてやがったけど、無視だ!
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