週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
うとうと─彰
ルームミラーに映る、後ろに積んだでっかい袋が三個。
あの店で一番でかい袋をもらったから、かなりの大きさだ。
日持ちするいーものが意外に多くて、想定してたよりもたくさん買い込んでしまった。
でも、あの中には生クリームがある。
俺が一番手に入れたかった、フレッシュクリーム500mlが!
あのあと、ちょっと赤くなった朝陽さんが『そんなにしてーんなら、付き合ってやってもいー』って言ってくれたんだ!
一時はどーなることかと思ったけど、ホントに嬉しー!
明後日は朝陽さんのイチゴ、果ては下のアレにも塗って食べるんだ。
昼飯を食った後の帰り道。
鼻歌を奏でながら車を運転していると、ケータイでたこ焼き屋を探してる朝陽さんが横目でこっちを見た。
「ご機嫌だな」
「うん!」
「そんなに、オレに生クリーム塗るのが嬉しーのか」
「超嬉しー!」
「彰の変態っぷりは、留まるところを知らねーよな」
「朝陽さん限定だよ」
「ん。当たり前だ……」
朝陽さんは恥ずかしーのか、俯き加減になってしまった。
髪の隙間から見える耳が、ほんのり赤くてかわいー。
てか、明後日……俺の企みが、漸く叶うんだ!
しかもすでに朝陽さんが承諾してるから、コソコソする必要もねぇし。
明後日は、とびきり美味しーシチュー作ってあげねーと。
散々喜びを噛み締めた俺は、できるだけ朝陽さんの要望に沿おーと、具材アンケートを取ることにした。
「ねー朝陽さん、シチューの具はなにがいー? 肉はやっぱ、鶏ももかな」
「………………」
「あれ? 朝陽さん?」
食べ物の話となると元気に返事をするはずの朝陽さんが、返事をしない。
どーしたのかと隣を見ると、ケータイを握り締めて頭を揺らしてた。
興奮しながら歩き回ったし、疲れたのかな?
昼飯食ったから落ち着いたのもあるか。
俺は折よく見付けたコンビニの駐車場に入って、入り口から一番遠い場所に一旦車を停めた。
「朝陽さん、そのまま寝たら風邪引くからコート掛けるよ」
「……ん」
「ケータイ取るからね」
「んー……」
ホントに眠そー。
朝陽さんの手からケータイを抜いたら、たこ焼き屋のホームページが開きっぱなしだった。
それを微笑ましく思いながら、後ろにある自分のコートを取って、身体を包み込むよーに掛けてやる。
「たこ焼き、ここのでいーの?」
返事はないとわかってるけどそう呟いて、俺はたこ焼き屋に向けて運転を再開した。
-END-
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