週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
苦しい言い訳─朝陽
「……あった!」
ベーコンを厳選してたら、彰がいきなり嬉しそーな声を上げた。
「ん?」
見ると、500mlの紙パックを手に取ってニヤニヤしてやがる。
……なんか企んでそーな感じだな。
さっき冷凍のおかずを見てた時も、ぼーっとしてやがったし。
オレは、一番形がよかったベーコンをカゴに入れて、いかがわしー顔の彰との距離を詰めた。
「おい」
「っ、朝陽さん!」
「その紙パックはなんだ?」
「生クリーム、だよ。朝陽さん、クリーム系の飯も好きだよね……?」
「! オレ、明後日辺りにシチューが食いてーと思ってたんだ!」
彰が作った生クリームシチュー、かなり美味いんだ!
牛乳を減らして生クリームを足すだけらしーんだけど、コクが全然違うっつーか。
とにかく美味すぎんだ!
「ビーフじゃなくて、クリームシチューがいーの?」
「シチューなら、なんでもいー」
「じゃあ、ちょうどいーね」
「ん。でも、それは多くねーか?」
「え」
「前に作った時、200ml入りのがちょうどよかっただろ」
「あ……うん」
「シチューは明後日だし、生クリームは日持ちしねーし、普通のでよくね?」
「うぅ」
「どーせ野菜は普通にスーパーで買うんだしな」
「えっ、とー……」
彰が嬉々として500mlの生クリームをカゴに入れよーとするから突っ込んだら、何故か急に焦りだした。
オレ、別におかしーこと言ってないよな……?
冬なのに軽く汗をかいてる彰は、かなり異様な感じだ。
やっぱりなんか企んでんのか?
シチューが食える嬉しさで忘れてたけど、そーいえばこいつ、生クリーム見付けてニヤニヤしてたんだよな。
もしサプライズでケーキとか作るなら、オレがバレンタインにしたみてーに一人で行動すればいーし……。
怪しすぎるな!
「なに企んでやがる?」
オレは、考え込む彰に詰め寄った。
「あ……う……」
「生クリームで、なにがしてーんだ」
「あ、朝陽さんが、なんかしたくなるかな、とか」
「……くだらねー言い訳してねーで、さっさと吐け!」
「ごめんなさい! 朝陽さんに塗りたいんですッ!」
「オレに?」
「うん。朝陽さんのイチゴに塗って、食べたい……な?」
「オレの、イチゴ……」
聞いたことがあるよーなフレーズだ。
あれは確か付き合いだしてすぐの頃に、彰がケーキを買ってきて……。
「思い出したぞ。彰は変態だな」
「…………うぅ」
もしかして、ちょくちょく狙ってたのか?
定期的に生クリームを使ったメニューが出てきてたし。
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