週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
惚れ直した瞬間─朝陽
オレたちは今日、彰の運転で業務用食材が売ってるスーパーにやって来た。
彰の運転練習と買い出しと、ドライブデートの三つを兼ねて、だ。
「彰! もーすぐだぞ」
「ホントだ。看板があるね」
国道を案内看板の通りに右折してしばらく進むと、広い駐車場と平べったい建物が現れた。
一階建てだからか、やけにでけー!
「すげー!」
「思ったより建物がでかいね」
「ん。売ってるものもでけーからな」
「いーものがあるかな?」
「ある!」
「朝陽さん、来たことあんの?」
「来たことはねーけど、直感だ」
「あはは。朝陽さんは勘がいーもんね」
「オレだからな」
「うん。大好き」
「ん」
車は駐車場をぐるっと回って、結構いー場所に停まる。
手慣れた様子で車を停めたりサイドブレーキを引く彰は、なかなか様になっててかっこいー。
ちょっとした仕草で、たまにドキッとしてしまう。
言ってやらねーけどな。
「よし、気合い入れて行くぞ!」
オレはちょっと熱くなった顔をごまかすよーに彰の太ももを軽く殴ってから、シートベルトを外して車を降りた。
外はさみーけど、熱い顔が冷えるからちょうどいーな。
「うわっ、さむ! 駐車場は風を遮るものがないからすごいね。朝陽さん大丈夫?」
「彰は軟弱者だな。オレはこれで、ちょうどいー」
「マジで? すごいなぁ朝陽さんは」
「当たり前だ」
「でもこっち来て。そこは風当たるから」
「あっ」
彰がオレの腕を軽く引いて、自分の傍らに誘導した。
オレから見て風上の方向には彰の身体があるから、寒さがかなり和らぐ。
寒がってたくせに……バカじゃねーか?
しかも嬉しそーな顔で笑いやがって。
「ちょっとマシでしょ?」
「ん……」
「じゃあ行こっか」
「あきらっ」
「なーに、朝陽さん」
「寒くねーのか?」
「朝陽さんがいるから、大丈夫」
「なんだそれ」
「嬉しくて心がポカポカする感じ?」
「心があったけーと、身体もあったけーのか?」
「うん。隣にいるだけで俺をあっためてくれるから、朝陽さんはすごいね」
「…………彰も、すげーよ」
「? 俺も?」
「いっ、いーから行くぞ! バカッ」
……惚れ直したなんて、言ってやらねー!
オレは彰のコートを掴んで、入り口に向かって突き進んだ。
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