週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
子供じゃないもん─彰
脱いだブーツの手入れを済ませてから廊下を歩きだすと、抜け駆けしやがった大翔がリビングから出てきた。
なんか手に袋を持ってるのが微妙に気になる。
「もー帰るわけ?」
「予定があるからな」
「あっそ。てか、それはなんだ」
「賞味期限が迫ってるからって、分けてくれた」
「ふーん……?」
そんなもんあったっけ。
冷蔵庫のチェックはこまめにしてたんだけど。
「そーいうわけで。じゃあまたな」
「おう」
……ま、いっか。
それより、早く朝陽さんに会いたい!
俺は張り切ってリビングのドアを開けた。
すると、エプロンドレスを着けた朝陽さんが笑顔で迎えてくれた。
可愛すぎて、疲れが一瞬で癒される。
「おかえり」
「朝陽さんただいま。てか……カレーの匂いがする!」
「ん。バレンタインだから作ってみたんだ」
「マジで!? 早く食いたいな」
「じゃあ、さっそくご飯にするか。彰は座ってろ」
やべぇ!
朝陽さんの愛情カレーとか、マジでサプライズだ。
手作りチョコだけでも超感動なのに……。
俺はしみじみと幸せを噛み締めながら、コートを脱いで席に着く。
「朝陽さん」
「なんだ」
「大翔にあげたのってなに? 期限切れになりそーなのって何かあったっけ」
「チョコだ」
「え」
「見てビビるなよ!」
朝陽さんはそー言うと、冷蔵庫からプリンの入れ物を出してきた。
中身はココアプリン?
ど真ん中にかわいー形のホワイトチョコが突き刺さってる。
「生チョコだ。スプーンで食えるよーになってる」
「これ、生チョコなの!?」
「オレが作った。あと五個あるぞ」
「すげぇ! 朝陽さん、こんなの作れるんだ!」
「当たり前だ。オレだからな」
「うん、バレンタインチョコだね。朝陽さん大好き」
「ん」
「嬉しい。俺、超味わって食うよ。朝陽さんの愛情が詰まったチョコ」
「そ、そか……」
照れてる朝陽さん、超かわいー。
俺は椅子から立ち上がって、軽く俯く朝陽さんを抱き締めた。
そしたら素直に抱き付いてくる朝陽さん。
可愛すぎて好きすぎて鼻血出そー!
てか生チョコとかすごくね?
しかも朝陽さんが、俺のために作ってくれたのだし。
……って、大翔にあげた!?
「朝陽さん!」
「なんだ。うるせーぞ」
「ごめん……。でも、これ大翔にあげたって!」
「日持ちしそーにねーから、一個分けてやったんだ」
「なんで!? 俺のチョコなのに!」
「まだ六個もあるんだからいーだろ。子供みてーなこと言うな」
「子供じゃないもん、独占欲だもん」
「……はぁ」
俺は、溜め息を吐く朝陽さんを力一杯抱き締めた。
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