週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
チョコ作り─朝陽
いよいよ今日はバレンタインデー。
オレは計画通り、彰がバイトに行くのを見送ってからスーパーに行ってきた。
彰にチョコを作るって決めてから、何日か悩み抜いたオレが選んだのは生チョコ。
理由は、美味いのに作り方が簡単だったからだ。
でも、オレはそれを更に簡単なレシピに改良してみた。
聞いて驚くなよ。
なんと、取ってあるプリンの容器で冷やし固めて、そのままスプーンで掬って食えるよーに考えたんだ!
だって、いちいち四角く切るのはめんどくせーだろ?
「よし」
手を洗ってエプロンを着けたオレは、まず生クリームを鍋に空けた。
もちろん、200ml全部だ。
余ったらめんどくせーから、ちょうどいーだろ?
とりあえずこれを中火にかけて、人肌にあっためてく。
指を突っ込むわけにはいかねーから、目安は湯気だ。
軽く湯気が立ってきたら、火から下ろして刻んだチョコを100g入れる。
ちなみにオレは、バレンタインコーナーにあった便利な粒チョコを買ってきた。
ちょうど100g入りだったし刻まなくてもいーし、最高だ。
「ん。美味そー」
チョコを入れた途端、いー匂いがキッチンに広がる。
生クリームが多いから、サッと溶けて滑らかなチョコ液ができた。
さすがオレだな!
あとはこれをプリンの容器に流すだけ。
やべー、簡単すぎだろ。
これで彰が泣いて喜ぶんだぞ。
「てか多いな」
味見用も取ったのに、余ると思いながら用意した七個の容器が全部埋まってしまった。
一日一個ずつで確実に三日はかかるな。
奇数だし、早く食った方が良さそーだし、魔王に一個分けてやるか。
ちょうど診察時間外だし、オレは電話で魔王を呼び出した。
『朝陽? 珍しいな』
「魔王は今夜暇か?」
『いや、ちょっと約束がある』
「そか。今、チョコ作ってたんだ。分けてやるから取りに来い」
『手作り!? マジかよ』
「ん」
『でも、彰は怒らねぇの?』
「サプライズだから、チョコのこと知らねーんだ。六時までバイトだし」
『そっか。じゃあ、仕事終わったら彰拾って行くな』
「わかった」
……よし、これでいーな。
電話を切ったオレは、冷蔵庫に入れるにはまだ早いチョコをダイニングテーブルに移して、冷蔵庫の野菜コーナーを開けた。
これからサプライズで、夜ご飯も作ってやるつもりだ。
火曜は彰が作るんだけど、オレなりのプラスαだからな。
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