週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
手作り料理─彰
今日はいよいよ、普通運転免許の学科試験本番。
平日しか試験を受けられないから冬休み中に取るはずだったんだけど、例の捻挫のせいで今日になってしまった。
朝陽さんがそのことをやたら気にしてて、今日は平日なのに朝飯を作ってくれてる。
大学の試験期間には間に合ったんだから、気にしなくていーのに。
ちなみに俺は、強制的に最終確認をさせられてる最中。
簡単だから余裕なんだけど、それを言ったら『世の中そんなに甘くねーぞ』って一蹴された。
でもエプロンドレス姿の朝陽さんと美味しそーな匂いで、集中なんかできないよ。
「よしっ。できたぞ」
朝陽さんの声と共に、カチッとコンロの火を止める音がした。
こっちを見られる予感がして、俺は慌ててテキストに視線を戻す。
「彰っ」
「な、なーに、朝陽さん」
やべ、後ろ姿に見惚れてたのバレたかな……?
「集中してたみてーだな!」
「まっ、まーね! ほら、油断してたら足を掬われるし」
「ん。意外なとこが試験に出たりするからな」
ほっ……よかった。バレてないみたいだ。
朝陽さんは満足げに笑って、小さな鍋からスープを取り分けだした。
キャベツの芯と、朝陽さんが実家からもらってきたハムブロックの端をコンソメで煮込んだスープ。
芯も端も硬いのに、見るからに柔らかく煮込まれててすげぇ美味そー!
それにバターロールとゆで卵とシーザーサラダまで出てきて、あっという間に朝の食卓が出来上がった。
「朝陽さんっ、いただきます!」
「ゆっくり食えよ」
「うん!」
俺はさっそく、愛情たっぷりのスープから飲んだ。
ちょうどいい塩気にトロトロのキャベツ。
少し歯応えの残ったハムも美味いし、おまけに身体が中からあったまる。
「美味すぎ……」
「これで、腹の底から力が出るだろ」
「そーだね。朝陽さんの愛が入ってるから最強だよ」
「そ、そか」
朝陽さんは“愛”って部分で顔を赤くして俯いてしまった。
すげぇかわいー。
手料理は美味いし本人は可愛すぎるし、サイコーだ。
←Series Top
|