週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
最後の乗り物─彰
朝陽さんが一生懸命冷ましてくれたコーンポタージュのおかげで、俺は生き返ったようになった。
……って、ホントは人混みの中から朝陽さんを見付けた瞬間に元気が出てたんだけど。
俺は隣でおしるこを飲む朝陽さんとの距離を少し詰めて、ライトアップされた乗り物たちを見上げた。
「ライトアップ、綺麗だね」
「ん。夢の世界にいるみてーだろ」
「ねー朝陽さん」
「なんだ」
「……最後に、観覧車乗ろっか」
「観覧車って……お前、大丈夫なのか?」
「たぶん。デートの想い出に、朝陽さんと二人きりで綺麗な景色を見たいんだ」
「デート……。オレと、彰の」
「うん。そーだよ」
暗いから高さは気にならないと思う。
なにより、朝陽さんと二人きりになりたい。
好きだよって囁いたり、あわよくばキスしたい。
てか、遊園地デートのフィニッシュは観覧車が鉄板でしょ!
「じゃあ並ぶか!」
朝陽さんは嬉しそーに笑って、おしるこの缶をゴミ箱に投げ入れた。
「うん。早く行こ」
「すげーやる気だな。あんなに『観覧車だけは無理!』って言ってたくせに」
「あれは過去の俺だよ。今日、俺は進化したんだ」
「マジかよ! かっけー」
「でしょ」
「ん。見直した」
よし!
これでホントに観覧車が平気なとこ見せて、惚れ直させてみせる。
俺は意気揚々と、だんだん見えてきた、やたら長い行列に挑んだ。
◆ ◆ ◆
「朝陽さん、ホントだからね!」
「ん。わかってる」
結局、観覧車には乗れず仕舞いだった。
あ! 俺が悪いんじゃないからな。
これ以上は閉園時間を過ぎるとかで、行列がもう締められてたんだ。
「次に来た時、乗ればいーだろ」
「そーだね。また近いうちに来よーね。春とか」
「いや、次は夏だ」
「夏?」
「ん。ここのお化け屋敷は、七月からだからな」
「あ……!」
「すげー怖いらしーから、今日以上に気合い入れていけよ」
「う、うん」
忘れてた、夏のお化け屋敷巡り!
朝陽さんって……意外に記憶力いーんだよね。
「よし彰、美味いもん食って帰るぞ!」
「あったまるのがいーな。ラーメンとかは?」
「あ、いーなそれ!」
……ま、今は考えないよーにしよ。
俺はケータイでこの近辺のラーメン屋を検索しながら、遊園地のエントランスに向かう朝陽さんに続いた。
-END-
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