週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
夢の中にいるみたい─朝陽
「はい、プレゼントだよ」
「サンキュ!」
よしっ!
ナッキーを捕まえてお菓子の詰め合わせをゲットしたぞ。
オレは意外にでけー袋の中身を確かめながら、彰にも見せてやろーと回れ右した。
「彰、この中……」
あれ?
彰が……いねー。
オレの後を情けねー顔で追い掛けてきてると思ってたのに、どこにもいねー。
どこに行きやがったんだ?
まさか、迷子になったのか!?
二十歳にもなって、しかたねー奴だ。
もー暗くなってきたし、オレは素早く頭を切り替えて“迷子センター”に向けて歩き出した。
夜はライトアップがあるから、早く彰と合流してーんだよな。
……とか思ってる間に、始まった。
あらゆる乗り物や設備が、順番にライトアップされていく。
いろんな色のライトが下から順番に。
周りの奴らと同じよーに、オレもその場に立ち止まってそれを見る。
「すげー……」
まるで、夢の中にいるみてーだ。
この点灯の瞬間……彰と見たかったな。
周りからはダチに見えてても、オレは彰とデートしてるんだから。
感動と寂しーので少し涙が出そーになる。
オレは、それを拭うために慌てて服の袖口をコートから引っ張り出した。
すると。
「朝陽さん!」
「!」
遠くから足音が近付いてきて、目の前に激しく息を切らした彰がやって来た。
「あきら……」
「ごめ……っ、朝陽さ、ん」
「大丈夫か!? 落ち着いて、五回深呼吸しろ」
「おれ、ケータ、イ」
「いーから喋るな! あっちに座るぞ!」
オレは隅のベンチまで彰を促して、軽く突き飛ばしてやった。
「お前はこのお菓子でも見てろ。オレはジュース買ってくるから、ここから動くなよ」
頷いた彰にお菓子の袋を渡して鞄を奪うと、オレは近くの自動販売機に走った。
ベンチにへたり込んだ彰は、どれだけ必死に走ったのか知らねーけど、冬なのに汗をかいてた。
たぶん、オレを探し回ってたんだろーな。
とは言ってもムカつくのに変わりはねーから、彰の奢りでロシアンにしてやる!
冷たきゃ、お茶でもなんでもいーだろ。
オレは彰の財布から出した小銭を入れて、自販機を見ずにテキトーにボタンを押してやった。
ガコンガコンと、うるせー音を立てて出てきた二つの缶を取り出すために屈む。
「……あっ」
やべー、これあったけーのだ。
しかもお茶とかじゃなくて、コーンポタージュとおしるこ……。
ま、まー……いっか。
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