週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
人混みではぐれた!─彰
「彰。これ見てみろ」
次はどれに乗ろうかと歩き回ってたら、朝陽さんが受け取ったばっかりのチラシを見せてきた。
「えっと……『ナッキーを探せ』? てかナッキーてなに?」
「この遊園地の新しいマスコットらしー。探して捕まえたら、プレゼントゲットだ!」
「あ……ホントだ。プレゼントはお菓子の詰め合わせだって」
「ん。探すぞ!」
「え」
「早く付いてこい!」
朝陽さんはそー言いながら、いきなり人混みに向かって走り出した。
なんでこんなに元気なんだ!?
お菓子の詰め合わせがもらえるせい?
そんなお菓子なんか、俺がいくらでも買ってあげるのに。
……じゃなくて、早く追い掛けないと!
俺はちょっと疲れた足に鞭打って、朝陽さんが駆け出した方向に向かった。
「朝陽さーん! 待って!」
「おせーぞ彰っ、早くしろ!」
ちょっと先で待っててくれた朝陽さんに安堵しつつ、なんとか追い付く。
とりあえず探すにしても、一緒に行動しないと。
「先に行ったらダメだってば。はぐれるから、一緒に」
「あっ! ナッキーがいたぞ!」
「もう、言った傍から!」
マスコットを見付けたらしー朝陽さんは、俺の制止も聞かずに更に向こうへと走っていった。
園内、人でいっぱいなのに……。
朝陽さんに追い付いてひと安心してしまってた俺は、すぐには動けずに立ち尽くした。
……ま、ケータイがあるからそれで連絡取れば合流できるし、いっか。
俺はフラフラと傍らのベンチに寄って、腰を下ろした。
「疲れた……」
なんとか朝陽さんに付き合って乗り物に乗りまくってるけど、どーしても脚に余計な力が入って疲れるんだよね。
無意識で、踏ん張るのに必死になってしまうっていうか。
ふくらはぎを軽く揉みほぐしたら楽になるかな。
そー思いながら傍らに鞄を下ろすと、それだけでちょっと楽になった。
二人分の荷物だから地味に重いんだよね。
朝陽さんは身軽なのが好きだから、財布もケータイもすぐ俺に預けるんだ。
…………え。
朝陽さんのケータイ!
「うわ、やべっ!」
俺が持ってちゃ意味ねぇじゃん!
どーしよう!
俺は慌てて立ち上がって、辺りを見渡した。
でも、見渡す限り知らねー奴らだらけの人混み。
朝陽さんは、もちろん見当たらなかった。
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