週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
長蛇の列─朝陽
すげー楽しー!
やっぱ一発目から絶叫したら、その流れでどんどん行けるな。
彰も最初はヘロヘロで情けねーことになってたけど、もー慣れたっぽいし。
オレはこの遊園地で一番人気のジェットコースターへ続く行列の最後尾に着いて、背後の彰に向き直った。
「彰っ」
「なーに、朝陽さん。すげぇ楽しそーだね」
「ん。サイコーだ!」
「よかった」
「彰も楽しーか?」
「うん。朝陽さんが楽しそーだから、俺も楽しくなってきたよ」
「高所恐怖症が克服できたわけじゃねーのか」
「そーだね……。スピードで紛れてる感じ」
「やっぱ、どーにもならねーか」
「でもさっき、フリーフォールに乗れたし!」
「まーな」
……すげー悲鳴上げてたけどな。
でも、怖いのにオレに付き合ってくれてるんだから、文句は言わねー。
ちょっと情けねーぐらいの彰なんて、毎日見てるからなんとも思わねーし。
そんなことを思いながら彰の顔を見上げたら、彰はオレの頭の向こうを見てた。
「彰?」
「朝陽さん見て、あそこでソフトクリーム売ってる」
「ホントだ。冬なのに売れるのか?」
「わかんない。でも朝陽さん、食いたくない?」
「……食いてー!」
「あはは、かわいーな。じゃあ買ってきてあげる」
「ん」
彰はオレの背中を軽く撫でてから、小走りでソフトクリームのワゴンに向かった。
客がいねーからすぐに買って、そのまままっすぐ帰ってくる。
相変わらず間抜け面だけど、黙ってるからイケメンだ。
「朝陽さんお待たせ」
「サンキュ。彰が買いにいったら、バイトが慌ててたな」
「うん。すげぇ暇そーにしてた」
「冬に外でアイス食うなんて、オレぐらいだからな」
「そーかも。てか朝陽さん、風で寒いからこっちおいで」
「ん」
彰がオレの腕を引いて懐に収めると、角度を変えて風上に立った。
ちょっと恥ずかしーけど、せっかく風避けになってくれたんだから、おとなしく懐にいてやるか。
オレはその場でソフトクリームを舐めながら、どんどん後ろに伸びてく行列を見遣った。
やっぱりカップルが多い。
ダチ同士のグループもわりとあるけど……。
オレと彰は、ダチ同士で来てるよーに見えるんだろーな。
くっついてても男同士だし。
「朝陽さん? 寒くなった?」
俯いて考えてたら、彰が心配そーな顔をして覗き込んできた。
「! だ、大丈夫だ。それより、もーすぐ順番が回ってきそーだから手伝え」
「っ、む。うん」
オレはごまかすよーにコーンを割って、彰の口に入れてやった。
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