週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
何に乗るかで分かれる意見─彰
とうとうやって来た、遊園地。
俺の隣にいる朝陽さんは、さっきから嬉しそーに園内マップを眺めてる。
満面の笑みで、すげーかわいー!
フリーパスで乗り放題だから、どれから行くか迷ってるみたいだ。
なんでも好きなのから乗っていこーね。
……と、余裕で構えてたいところだけど、そうはいかない。
なにしろ俺は、高所恐怖症だから!
朝陽さんにはがんばって乗るって言ったけど、最初から飛ばされたら困る。
「彰っ」
「なーに、朝陽さん」
「やっぱ最初はフリーフォールだな」
「待って。もうちょっとソフトなやつからにしない?」
「怖いのか?」
「……ほら、ゆで卵作るのに冷蔵庫から生卵出していきなり熱湯に入れたら、衝撃がでかすぎて殻にヒビが入って白身が漏れるじゃん?」
「怖いんだな」
「…………はい」
「彰はしかたねーな!」
「うぅ……」
カッコ悪いなー俺。
でも、これだけは譲れないんだよね。
朝陽さんは再び園内マップに視線を落として、考えだした。
なるべくソフトな、怖くないやつでお願いします……。
地に足が着くものなら、動きが多少激しくても文句はないんだけど。
例えばコーヒーカップみたいな。
「じゃ、これにするか」
「えっと……」
朝陽さんがおもむろに、マップの一ヶ所を指差した。
バイキング?
海賊船みたいな絵が書いてある。
船に乗ってのんびり冒険する感じかな。
「いーよ。楽しそー」
「よし! そうと決まればすぐに行くぞ。これはたぶん並ばなくても乗れる」
「そーなんだ。俺、朝陽さんの隣がいーな」
「ん。はしっこに行くか」
「喜んで」
正直に言うけど、俺は遊園地に疎い。
好きじゃないから数えるほどしか来たことがない。
だから、知らなかったんだ。
……バイキングで無重力体験ができるなんて。
「あ、あ、あ、朝陽さーんッ!」
「っひゃー、たまんねー! 浮いたよな、今!」
「俺、俺もう死ぬ……!」
「だらしねーぞ! バーから手を離せ!」
「そんなっ! 垂直だよ今!」
「あははははは!」
海賊船なんて嫌いだ!
なんで、船に乗って高所に怯えなきゃなんねぇんだ!
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