週刊『彰と朝陽』

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オニューの衣装─彰



 実は俺も昨日思い出したんだよね。

 親から成人式にって新しいスーツが届いて。

 正直めんどくさい。

 朝陽さんと過ごす時間がなくなるし、行きたくねぇ……。


「スーツはあるのか?」

「一応ね」

「よかったな。がんばってこいよ」

「もし行かなかったら、どーなるんだろ」

「まんじゅうがもらえねー」

「え」

「紅白まんじゅう。美味いよな!」

「朝陽さんは紅白まんじゅうが好きなわけ?」

「ん。中のこし餡も、皮も好きだ」

「どんな味だっけ」

「お前、去年法事で食わなかったか? 黄色と白のまんじゅう」

「食ったよ」

「それの色違いだ」

「マジで!?」


 紅白まんじゅうって、めでたいまんじゅうだよね?

 法事のまんじゅうの意味はわかんないけど、ただの色違いだなんて……。


「久しぶりに食いてーな」

「紅白まんじゅうを?」

「ん」

「俺がもらってきて朝陽さんにあげたら……嬉しー?」

「すげー嬉しー!」


 マジかよ……。

 朝陽さんは、無意識だろーけどニコニコしながら俺の胸元に頭をスリスリと擦り付けてる。

 なにこの仕草。おねだりみたいじゃん!

 可愛すぎてやべぇ!

 俺は鼻血を堪えながら、朝陽さんに笑顔を返した。


「だ、ダチがいらねぇって言ったら、もらってこよーかな」

「いーのか!?」

「まんじゅうも、朝陽さんにもらわれた方が幸せだろーし」

「でも、ダチの親が欲しいんじゃねーのか?」

「大丈夫だよ。別に成人式にダチの親が来るわけじゃないし」

「そーだけど……」

「じゃあ、他に欲しがってる人がいないか訊いて、いなかったらもらってくる」

「ん。そーしろ。食い物の恨みは怖いからな」

「とりあえず、俺のは確実に朝陽さんにあげるからね」

「サンキュ。オレ、大切に食う!」


 あーもう、かわいーな。

 成人式……ちょっと楽しみになってきたかも。


「そーいえば朝陽さんは去年、成人式に行ったの?」

「来いって言われたけど……行ってねー」

「地元が遠いからしかたないか」

「いや、会いたくねー奴がいたから……」


 朝陽さんから急に笑顔が消えた。

 その“会いたくねー奴”って、朝陽さんのなに?



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