週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
オニューの衣装─彰
実は俺も昨日思い出したんだよね。
親から成人式にって新しいスーツが届いて。
正直めんどくさい。
朝陽さんと過ごす時間がなくなるし、行きたくねぇ……。
「スーツはあるのか?」
「一応ね」
「よかったな。がんばってこいよ」
「もし行かなかったら、どーなるんだろ」
「まんじゅうがもらえねー」
「え」
「紅白まんじゅう。美味いよな!」
「朝陽さんは紅白まんじゅうが好きなわけ?」
「ん。中のこし餡も、皮も好きだ」
「どんな味だっけ」
「お前、去年法事で食わなかったか? 黄色と白のまんじゅう」
「食ったよ」
「それの色違いだ」
「マジで!?」
紅白まんじゅうって、めでたいまんじゅうだよね?
法事のまんじゅうの意味はわかんないけど、ただの色違いだなんて……。
「久しぶりに食いてーな」
「紅白まんじゅうを?」
「ん」
「俺がもらってきて朝陽さんにあげたら……嬉しー?」
「すげー嬉しー!」
マジかよ……。
朝陽さんは、無意識だろーけどニコニコしながら俺の胸元に頭をスリスリと擦り付けてる。
なにこの仕草。おねだりみたいじゃん!
可愛すぎてやべぇ!
俺は鼻血を堪えながら、朝陽さんに笑顔を返した。
「だ、ダチがいらねぇって言ったら、もらってこよーかな」
「いーのか!?」
「まんじゅうも、朝陽さんにもらわれた方が幸せだろーし」
「でも、ダチの親が欲しいんじゃねーのか?」
「大丈夫だよ。別に成人式にダチの親が来るわけじゃないし」
「そーだけど……」
「じゃあ、他に欲しがってる人がいないか訊いて、いなかったらもらってくる」
「ん。そーしろ。食い物の恨みは怖いからな」
「とりあえず、俺のは確実に朝陽さんにあげるからね」
「サンキュ。オレ、大切に食う!」
あーもう、かわいーな。
成人式……ちょっと楽しみになってきたかも。
「そーいえば朝陽さんは去年、成人式に行ったの?」
「来いって言われたけど……行ってねー」
「地元が遠いからしかたないか」
「いや、会いたくねー奴がいたから……」
朝陽さんから急に笑顔が消えた。
その“会いたくねー奴”って、朝陽さんのなに?
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