週刊『彰と朝陽』 ■しおりを挿む
どうしても声が聞きたくて─朝陽
やべー!
餅食い過ぎた。
年に一回しか帰らねーから、親がやたら食わせたがるんだよな。
次々に焼いて、まるで“わんこそば”みてーにオレの皿に乗せてくるんだ。
ま、全部食うオレもオレだけどな。
オレはベッドに大きく寝転がって、なんとなくケータイを開いた。
……彰の奴、なにしてんだろ。
今ごろ、寂しがったりしてるんじゃねーかな。
今日は三日だから、もー五日間ぐらいは会ってねーし。
とりあえず様子見でイタズラメールでもしてやるか。
新規メールは、メニューからメールの絵を選ぶんだよな……。
いつもメールは返事するかしねーかだから、ややこしくて困る。
なんて思いながら、オレはメールの絵を選んで決定ボタンを押した。
「んっ?」
でも、画面は何故か“通話中”になった。
ちょうどオレがボタンを押した瞬間に、電話が掛かってきたみてーだ。
「もっし?」
『……あれ? 朝陽さん?』
「ん。なんだ彰か」
すげー。メールしよーとしたら電話が来るとか。
なんか以心伝心みてーだ!
オレは軽くドキドキしながら、なんでもねー感じを装って応えた。
『いきなり繋がったね。ビックリした。朝陽さん、なにかしよーとしてたの?』
「!」
軽いドキドキが、一つの大きなそれに変わった。
彰にメールしよーとしてたなんて、言えるわけねー!
「あ、彰の電話に出てやった!」
『え』
「彰から電話が掛かってくるって、わ、わかったから……」
『そーなんだ! すげぇ朝陽さん』
「オレだからな。それぐらい当たり前だ!」
『うん。朝陽さん……大好き』
「なっ! なんだいきなり!」
『俺、どーしても朝陽さんの声が聞きたくて、電話したんだ……』
「寂しーのか」
『うん。早く朝陽さんに会いたい』
思ったより寂しがってるな。
こないだ、彰が法事で田舎に行った時は、オレが寂しくなったんだよな。
寂しくなったっつーか、腹が減ったっつーか。
やべー、優越感が湧いてくる。
「そんなにオレに会いてーか?」
『会いたい! もーマンションに帰りたい』
「じゃあ帰るか」
『え……』
オレも彰に会いてーんだ。
さっきは彰が寂しがってないか気にしてたけど、ホントはオレの方が寂しかったのかもしれねー。
そんな風に素直に考えてみたら、気持ちがなんだか落ち着いた。
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